のぼりべつクマ牧場通信 28号(2019年10月)

(↑クリックでPDFをダウンロード)

 

子グマのハンティングタイム

ニジマスを獲ったカリン(左)、ニジマスを追うラン(右)=9月8日

野生の血が騒ぐ!?ニジマスハント始まる
北海道に暮らしているヒグマは、秋になると川へ遡上してくるサケを狙って食べている個体もいます。秋にしか食べられないごちそうをヒグマたちは毎年待ちわびています。
 
のぼりべつクマ牧場では子グマ牧場にて、9月7日~10月14日の土日祝日限定で、「子グマのハンティングタイム」を行っています。子グマ牧場に設置した水槽の中にニジマスを入れ、野生でも行っている魚の狩りを経験してもらいます。
最初は水槽にニジマスがいることに気づいていないようすの子グマたち。飼育員が餌で水槽に誘導すると、泳いでいるニジマスに気づいて追い始めました。最初にニジマスを捕まえたのは「ハル」でした。それを皮切りに子グマたちは次々に水槽へ入っていきました。最近はハンティングも段々と慣れてきた子グマたち。イベントが始まるとまっすぐに水槽に向かっていくようになりました。
6頭の子グマはハンティングにも個性が出てきました。水槽に入るとすぐにニジマスを捕まえる器用な子グマもいれば、なかなか捕まえられずに、他の子グマが獲ったニジマスを横取りしようとする子グマもいます。
 

「エス」、第二牧場引退

第二牧場の「エス」(23才)が加齢による腰痛のため、9月4日に引退をしました。エスは最前列でよくオヤツアピールをしていました。立ち上がったり、寝転がったりしてアピールをするユニークなクマでした。遊ぶことが好きで、牧場にいる時は一人でも楽しそうに遊んでいました。
今年のNKB総選挙では、歌姫「カコ」や曲芸師「プリンプリン」を抑えて3位にランクイン。人気が急上昇しました。現在は治療室に引っ越しをして、飼育員が作った遊び道具で楽しそうに遊んでいます。
 

オヤツアピールをするエス=第二牧場

プールレース終了近づく

気温が低くなり、寒くなってくる11月頃にプールレースを一旦お休みし、障害物競走に変更になります。プールの上に板を敷き、その上で障害物レースを行います。障害物をよけながら、一生懸命ゴールを目指して走るアヒルたちをぜひ応援してあげてください。
 

プールを泳ぐアヒルたち=9月18日

エブリデイ!エンリッチメント

獣舎内の壁や遊び道具など色々な場所にクマの大好物である果物の甘いジャムを塗っています。クマたちは「餌を食べ終えてもまだジャムがある」と言わんばかりに、獣舎内をウロウロしながらジャムを探して過ごしています。
 

ジャムを舐めているクッタ=9月22日

松本獣医のズバッと答えます!

最近年を取ったせいか足腰が…イテテ…
年を取ったヒグマが足腰を痛めていたらそれは「変形性脊椎症(ヘンケイセイセキツイショウ)」という背骨が変形してしまう病気かもしれません。高齢のヒグマのほとんどにみられる病気で、背骨の変形部位に痛みを伴います。背骨は神経が多く存在する箇所なので進行すると神経麻痺にも発展し、歩行異常などの症状がでます。さらに症状が進むと自力で立てなくなったり、飲水もできなかったり長期的なケアが必要になる病気です。
 
ヒグマ以外にも人間や犬など多くの哺乳類で年をとるとともに発生するリスクが高まる病気ですが、ヒグマでは特に症状が重いことが分かっています。その原因は詳しくは分かっていませんが、一説には筋肉量の低下が原因と言われています。ヒグマはもともと筋肉が多く、強靭な肉体をしています。
その強靭な筋肉で骨も支えています。年を取って筋肉が衰えることで骨を支えられなくなり、骨と骨がぶつかることで炎症を起こし、炎症部位が変形してしまうと言われています。予防法は骨を支えている強靭な筋肉を維持することなので、年をとっても適度な運動がヒグマにも望ましいと言えます。
 
適度な運動には環境エンリッチメントが最適です。餌を食べる時のちょっとした運動や穴掘りができる環境などを整える環境エンリッチメントが変形性脊椎症予防の特効薬になるかもしれません。

今月の飼育員のベストショット

「ようこそ!クマ牧場へ」撮影者:舩橋翔眞

のぼクマ劇場

なる作


飼育員は見たべあ!一覧はこちら