のぼりべつクマ牧場通信 45号(2021年3月)

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ラッキーの赤ちゃん、初めまして!

ラッキーの産室内の様子=2月14日

第一発見者が語る

「クゥー。」2021年1月17日、産室から小さな声が聞こえました。この日の飼育担当者が当日の様子を語ります。

ヒグマの出産時期は、12月~3月の為、その時期の産室の飼育作業は少しドキドキしていました。産室の天井部には換気口があり、そこから室内が観察できます。換気口の蓋は煙突のような構造で、中の音が聞きやすいようになっています。その日も、飼育作業を開始する前に中の様子を確認するため、煙突に耳をあてて音を聞きました。すると、いつもは静かな産室内で、いつもとは違った「クック、グゥグゥゥ」という声が聞こえました。
この声は、子グマが母グマに授乳を求めたり甘えたりする時の声と言われています。ついに、ラッキーはお母さんになったのです。

ラッキーは、初出産でしたが、子グマが生まれてからも子が鳴いたら四六時中なだめ、自分が動くときも子が冷えないように抱いたままで頑張っています。その逞しい姿に飼育員はほっこりとしています。
また、毎日の産室カメラでの観察や、扉越しに子グマの声を聞くことが、最近の飼育員の楽しみになっています。ラッキーの子グマの元気な姿をお見せできる日を、楽しみにお待ちください。

天井換気口から産室内を観察する飼育員=2月22日

教えて!!Q&A

〇ペンネーム「クマちゃんかわいすぎ」さま

Q クマはどのように見分けていますか? 予想:性格とか?

A 飼育員によって様々ですが、性格や顔、体の特徴、アピールの違いで見分けています。早い人では入社1ヶ月以内に全頭できる人もいます。中々分かりにくいですが毎日見ていると自然に分かるようになっていきます。
第一牧場や第二牧場には見分けやすいように個体紹介パネルがあります。ぜひ全頭見分けて推しグマを見つけてみてください。

個体紹介パネルの一部

ご長寿記録更新!!

60年以上の歴史があるのぼりべつクマ牧場での歴代最高齢は、6年間オスのエゾヒグマ「ロコ」(34才15日)でした。今年、「マケンコ」(メス)が2月4日をもって34才16日を超え、これまでの長寿記録を更新しました。

マケンコは1987年1月18日にのぼりべつクマ牧場で生まれました。1歳の時からクマ山ステージで自転車や大玉に乗るなどを披露し、お客様を楽しませてくれました。
15歳の時に担当トレーナーの退職を機にステージから引退し、現在は非展示の獣舎で生活しています。年齢による足腰の衰えは感じられるものの、食欲は旺盛で、自分よりも若い引退メンバーと共に、ゆったりとした老後の生活を送っています。
今後もマケンコが元気で長生きできるよう、飼育員一同サポートとケアを行っていきたいと思います。

獣舎内で隠居生活を満喫するマケンコ

松本獣医のズバッと答えます!

Case6
「16時頃、クマが急にウロウロし始めましたが、大丈夫ですか?」

動物園などで、動物がウロウロと同じルートを繰り返し歩く姿を見たことがある方も少なくないと思います。このような繰り返し行われる行動を「常同行動」と言います。常同行動が見られたとき、その動物は「○○をしたい!」という葛藤を抱えている可能性があります。

16時頃は、閉園後に待っている餌の直前です。リンゴなどの匂いが漂い、「今日はリンゴだ!食べたーい!でもまだ部屋の扉が開いていない…」という葛藤が生まれたことが推測されます。常同行動は、動物が何を考えているのかを推測するヒントになります。常同行動によって、葛藤のストレスが軽減されることがあることも分かってきています。鋭い目と鼻で観察してみると、いつもと異なる発見があるかもしれません。

きょうのくまさん

29才のおばあちゃんのクマです。金色の毛が特徴です。現在は、第二牧場を引退した高齢個体と一緒に生活しています。マイペースな性格なので、1頭で過ごしていることが多いキャンコですが、たまに他のクマにちょっかいをかけたりしています。これからも、皆と仲良く長生きしてもらいたいです。

キャンコ♀(29)

マニアの独り言。

なんか疲れ溜まってきたなぁ。リンパの流れが悪いわぁ。そういえば、リンパはリンパでも、リンパ腫は体内で免疫反応に関与しているリンパ球が腫瘍化したものだから全身で発生する可能性があるよな。人では、がん細胞の形態や性質により70種類以上にも分類されてたし、発生部位で多中心型や消化器型、前縦隔型、皮膚型とかに分類されるけど、犬は多中心型が多く、猫は消化器型が多かったか。

発生原因は不明だけど、猫白血病ウイルス感染症や、牛伝染性リンパ腫はウイルスが要因と考えられてるから怖いよな。ヒグマでの症例は少ないから未知数だけど、あるヒグマの症例では悪性度が高く急性に進行する「リンパ芽球性リンパ腫」、別の症例では三叉神経組織内の「B細胞リンパ腫」だったな。

リンパ腫は、抗がん剤が効きやすいという特性があるから生前診断できればいいなあ。エコーや血液検査が有効だけれど、確定診断にはリンパ腫の生検を行う必要があるのか。いけるかなー。あー肩凝った。

のぼクマ劇場

なる作