のぼりべつクマ牧場通信 43号(2021年1月)

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2021年の母グマは誰に!4頭出産準備へ

いざ、出産準備へ!

野生のヒグマは、秋に脂肪をしっかり蓄え、冬には巣穴にこもる「冬ごもり(冬眠)」をします。そして、妊娠しているメスグマはその巣穴で出産育児をしています。
のぼりべつクマ牧場では12月になると、妊娠の可能性のあるクマは「産室」に引っ越します。そこは、出産、育児のための環境を整えた部屋です。床面いっぱいにワラを敷き詰め、巣穴のような暗く静かな場所で、野生での環境を模した構造となっています。

産室入りしたのは、5月から7月の交尾期にオスと同居した「ホノカ(5才)」と「ラッキー(5才)」と、人工授精を実施した「アナ(5才)」と「マロン(7才)」の計4頭です。

アナとマロンに実施した「人工授精」とは、採取したオスの精液を、メスの排卵日に合わせて注入する繁殖方法です。ヒグマの人工授精は、世界でもまだ成功例がありません。ヒグマはまだまだ謎が多いということが分かります。
野生での繁殖成功率には、秋の栄養状態が重要と言われています。つまり、産室に入る前までにどれだけ脂肪を蓄えられているかが、重要になってきます。今回の4頭は体格がとても良く、産室入りとしては申し分ない状態でした。産室で元気な子グマを無事に産んでくれることを、飼育員一同願っています。

出産が始まったらもう様子は見えない?

出産が始まったら、もう観察はできない?そんなご心配はいりません。産室内には暗視観察カメラが設置されています。産室内の様子は映像で記録しており、出産後も母グマにストレスを与えることなく毎日観察できます。
博物館のテレビモニターで、過去の育児映像を見ることもできます。是非ご覧ください。

育児をしている姿を捉えた過去の観察カメラの様子(産室内)

エンリッチメント大賞!一次通過するも受賞逃す…

今年はコロナ禍のなか、例年とは異なる形態でエンリッチメント大賞2020が開催されました。エンリッチメント大賞は、エンリッチメント(飼育動物の生活を豊かにする工夫)の取り組みについて優れたものを表彰するものです。

今年はのぼりべつクマ牧場もエントリーし、一次審査を通過しましたが、惜しくも受賞には至りませんでした。しかし、審査の過程では、日々の努力が認められ、「スタッフが正しい動物福祉の理解と熱意を持って」「業界全体(クマ牧場)を牽引(けんいん)する役割を担っていくことも期待」というような大変嬉しい評価も頂くことができました。

今回、好評価を頂いた主な取り組みは、廃材を用いたエンリッチメント器具、毎日何を用いてエンリッチメントを実行するのか記載したカレンダー、ハチミツを用いた無麻酔採血などです。どれも効率化、経費削減の特徴をもちつつ、クマたちの生活を豊かにする取り組みです。
今後も、クマ牧場の動物たちの生活を豊かにできるよう頑張っていきたいと思います。

のぼりべつクマ牧場で取り組んでいるエンリッチメントの事例

アヒルたちを守れ!

高病原性鳥インフルエンザが、令和2年10月以降、日本各地で検出されニュースにもなっています。もともと鳥インフルエンザは、世界各地の水生鳥類から検出されるウイルスで、多くは病原性が高いものではありません。しかし、ウイルスが感染を繰り返している間に変異が生じ、その結果、高病原性鳥インフルエンザウイルスが出現すると考えられています。
当牧場でも、ウイルス侵入予防策として、アヒル舎の防鳥ネットや消毒の徹底を行っています。

野鳥の侵入を防ぐ防鳥ネット=12月18日

飼育員からのクイズ

【問題】あるところに一頭のクマが懸命に暮らしていました。そのクマは目が開かず、歯もなく、立つこともままならない状態でした。しかし、飼育員はそのクマを笑って見守ってばかり。これはいったいどういうことでしょう。
(※解答はページ最後に記載)

きょうのくまさん

チャームポイントは、真っ黒の毛と長い爪です。マイペースな性格で、普段は控えめですが、サーモンには目がありません。サーモン争奪戦には負けん!マケンコだけに…。

マケンコ(33才:メス)

のぼクマ劇場

なる作

飼育員からのクイズ解答

そのクマとは、母グマに育てられている最中の赤ちゃんクマ。クマ牧場では産室で母グマが大事に赤ちゃんを育てます。体重約400gの小さなからだで生まれ、生後約40日で目が見え、50日頃から乳歯が生え始めます。可愛らしい赤ちゃんに飼育員もついつい微笑んでしまいます。

生まれてまもなく目が開いていない赤ちゃん(産室内)