のぼりべつクマ牧場通信 35号(2020年5月)

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新型コロナウイルス発生に動物は!?

静かな第二牧場で、飼育員が撒いたクルミ探しをするクマたち=2020年4月24日


新型コロナウイルスと動物
これまでに、人に感染する「コロナウイルス」は7種類見つかっています。このうち、5種類のウイルスは、一般の風邪の原因となり、多くは軽症です。その中の一つが、昨年12月以降に問題となっている「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」です。残りの2種類のウイルスは、2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」です。 コロナウイルスはあらゆる動物に感染しますが、種類の違う他の動物に感染することは稀と考えられていました。
 
しかし、今回の新型コロナウイルスは世界各地で動物への感染例が報告されています。3月23日には中国香港の犬で新型コロナウイルスの感染が確認され、初めての動物への感染例となりました。3月28日にはベルギーの猫でも感染が確認されました。そして、4月6日にはニューヨークのブロンクス動物園にてマレートラでの感染が確認されました。このマレートラには呼吸器症状や食欲不振などがみられていました。ブロンクス動物園では陽性が確認されたマレートラと同様の症状をライオンやトラの計7頭がみせていましたが、4月10日には全頭で症状が回復したと報告されました。
新型コロナウイルスは人だけでなく、動物にも感染することが次々と確認され、のぼりべつクマ牧場でも飼育しているクマやアヒル、リスへの感染対策を講じる必要性が確認されていました。
 
対策としては、餌を準備する飼育員の装備品の消毒や、飼育員が移動に使うルートを制限するなどを行いました。お客様にも手指のアルコール消毒を実施して頂くなどのご協力も頂いておりました。
 
動物の様子は?
のぼりべつクマ牧場のクマたちは、今回の新型コロナウイルスによる自粛の影響を受けて、静かな牧場でのんびりと元気に過ごしています。元気に仲良しのクマ同士でレスリングごっこをしたり、日向ぼっこや昼寝をしたりしています。ただ、牧場の近くを飼育員が通ると皆の顔が一斉に向きます。リスやアヒルもいつもと変わらず元気いっぱいの様子ですが、いつもよりのんびりとした時間を過ごしているように見えます。

飼育員は整備屋?

のぼりべつクマ牧場で飼育されているクマの飼料は、毎日飼育員が準備しています。クマ用に作られた飼料に加えて、牛用配合飼料、圧片トウモロコシ、ビートパルプ(甜菜)を与えています。クマ用飼料以外は、1袋20㎏もあるものを大量に用います。餌を準備する場所にこれらが必要なため、計200kgほどを毎日運んでいます。餌を作る場所まで手で持って運ぶとなると、大変ですが小型のトラック「モートラック」は一気に積んで1回で運ぶことが出来ます。
 
このように、飼料運搬に欠かせないモートラックですが、整備をしなければ故障してしまい長く使うことが出来ません。長くモートラックが使えるように私達飼育員は定期的にエンジンオイル交換や異常個所がないか等点検を行っています。餌のためには車のお世話も必要なのです。
 

飼料を積んだモートラック=2020年4月27日

エブリデイ!エンリッチメント

改めてエンリッチメントという意味はご存じですか?ペットにおもちゃを与え、喜んで遊んでいる!というのとは違います。本来の姿の再現というべき取り組みです。
本来、クマは餌を1日中探して歩き回っている動物です。そのため、消防ホースを編み込んだものや、漁業用浮き球に穴を開け、その中に餌を隠し、採食時間を伸ばしています。実は、ただおもちゃを入れればいいというわけではありません。野生下のその動物の行動を理解した上で初めて消防ホースや浮き球を入れる意味が出てくるのです。
 
最近ではエンリッチメントカレンダーという日毎のエンリッチメントを計画し、計画的に与えるものを変化させ、獣舎内は自然界のように予想がつかない刺激ある空間へと変化し始めています。その結果、エンリッチメント器具の利用を終えると寝ている時間が多かった獣舎内の風景から、餌を探し、更に体を動かすという活動的なエンリッチメントの風景になってきています。
私飼育員山本も、1年目の新人ですが、刺激ある毎日の中でクマを通してもっと勉強していきたいと思います。
 

2020年4月のエンリッチメントカレンダー

教えて!!Q&A

〇ペンネーム「匿名希望」さま
Q なぜ、ヒグマはそんなに鼻がいいのですか?
A 野生のヒグマは多様な環境に生息していますが、主な環境は「森林」です。
森林は、草原や海岸に比べて木々が生い茂っていて見通しが悪い環境になっており、目を使って危険を察知したり、餌を探したりすることが困難です。そのため、森林でも有効な「鼻」や「耳」が良くなったと考えられます。また、機能的な部分では、鼻が、猫などに比べて長いことも重要です。正確には「吻(ふん)」と呼ばれますが、吻の内側に匂いをキャッチする構造があります。
吻が長いほど、匂いをキャッチする構造も増えるため、嗅覚が優れていると考えられます。
 

落ち葉の下のドングリを探すのぼりべつクマ牧場のヒグマ

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