のぼりべつクマ牧場通信 33号(2020年3月)

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疑惑:スミリ産室子グマの声!?

上写真:スミリの胸元で動く子グマ=2月24日、観察カメラ
左図:上写真の見取り図


子グマの産声疑惑
昨年12月より「スミリ(14才)」と研究段階となる人工授精を試行した「アナ(5才)」が、出産するための獣舎である産室に入り、出産の準備を整えていました。今年は例年よりも暖かい冬を迎えましたが、産室内の気温は例年と変わらず-1~1℃で安定していました。
 
産室内の様子は観察カメラで常時記録されており、飼育員の事務所では、リアルタイムの映像と音声を確認することができます。そのような万全の監視体制で、今年も出産の兆候をつかもうと挑んでいた1月24日のことです。いつもと何も変わらず暖かい晴れた日の事でした。飼育員の事務所で課長と係長がデスクワークに勤しんでいた時のことです。
 
「(モニター)ググーッ」
「(N課長)ん?今鳴いた?」
「(M係長)今、何か変でしたね」
「(モニター)ググーグッ」
「(N課長)カラスの鳴き声が入ったにしてはいつもと違うよね」
「(M係長)カラスっぽい気もしますが、カメラの音声だと分かりづらいですね。」
「(N課長)少し時間空けて直接聞いてくるわ。」
 
このようなやりとりの後、N課長がスミリの産室の音を確認するために向かいました。産室は天井に小さな換気口があり、そこに耳を当てて音を聞くことができます。換気口で音を確認して来たN課長はにっこりと笑顔になり、右手でOKサインを出し皆に報告をしました。「ささ鳴き」という子グマの鳴き声が確認できたようです。
 
出産の前兆か!?
1月23日の深夜2時頃、観察カメラでは、落ち着きなくしきりに立ったり、座ったりを繰り返すスミリが確認されていました。死角になっていて詳細は不明ですが、スミリが自身の陰部を舐めるようなしぐさも確認されています。
 
子グマの成長確認
2月15日のことです。換気口のフタを開け、スミリの産室内を覗いてみると、黒い子グマがスミリの乳首を探して動いているのが確認されました。体長は目測で30㎝ほどになっており、生まれたときは20~25㎝と言われているので、少し成長しているようにみえます。

きょうのくまさんズ

3月3日はひな祭り。そんなおめでたい日に生まれたオスの双子ホクトとレッド。エゾヒグマの出産は冬ごもり中のおよそ1月~2月ですが、2頭は3月という少し遅れた誕生でした。現在21才の2頭は第一牧場を6年前に引退し、今は平和主義になって穏やかな性格です。2頭は今でも餌の時だけは口喧嘩をしていますが、寝るときはくっついて寝ています。双子らしいおじ様くまさんです。
 

レッド♂とホクト♂(21才:双子)

松本獣医のズバッと答えます!

Case4「クマって目が悪くなりますか?」
ヒグマは動体視力(動いているものを見る能力)がよい動物だと言われており、のぼりべつクマ牧場では、おやつを直接口でキャッチする様子も見られます。
ただ、稀におやつを直接キャッチできなくなってきているヒグマもいます。おばあちゃんクマさんです。ヒグマも年を取ってくると目が悪くなるようで、目が悪くなったクマさんは、おやつを一度体に当ててから、落ちたものをとって食べるようになったりします。年を取ると視力が落ちるだけでなく、白内障と言う病気になることも分かっています。白内障は目の中の水晶体という構造物が白く濁って視野が白くぼやけてしまう病気です。目が悪くなって生活がしづらいほどになると、段差の少ない部屋に移動するなど生活スタイルも変わってきます。白内障が進行して物の区別がつかなくなってしまうと、餌を探すのも困難になってしまいます。
 
のぼりべつクマ牧場には、以前は白内障で餌を探すこともできなかったノビタという名前のツキノワグマがいます。ノビタは酪農学園大学にて白内障の手術を行い、視力を取り戻したクマさんです。今では餌を探したり、屋内放飼場で遊んだりと活発な生活になりました。クマさんも人間と同じように目の病気になりますが、病気の治療も行えるようになってきています。
 

図:ノビタの手術前後の目の状態
左写真は白内障時の目の状態。中央が白く濁っている。
右写真は手術後の綺麗な目の状態。

雪遊びスペース出現

雪遊びスペース&雪像クマ


北海道の雪を堪能して頂きたく、のぼりべつクマ牧場では3年前から冬になるとアヒルレース場隣に「雪遊びスペース」と言う名の巨大雪塊が出現します。自然な雪のみでできたクマが見つめる広場の中で、スコップや雪玉メーカーを利用し、雪を存分に楽しんで頂くことができます。
今年は全道的に暖冬といわれ、登別でも暖かい日が続き、作製開始までに時間がかかりました。2月になると大雪が降り、この日を境にどんどん作業が進み、見事高さ2.5mの雪像クマとすべすべの滑り台が完成しました。雪が溶けるまで開催しています。Facebookでも定期的に状況を配信しているので、お見逃しなく!

のぼクマ劇場

なる作


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