のぼりべつクマ牧場通信 31号(2020年1月)

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2頭のヒグマ産室入り完了 待望の人工授精成功なるか!?

左:経験豊富なスミリ(14才)の産室内の様子=12月23日、産室カメラにて
右:人工授精を実施したアナ(5才)の産室内の様子=12月25日、産室


出産準備は入念に
交尾期となる5~7月にオスと同居させていたメスヒグマの「スミリ(14才)」と研究段階となる人工授精を試行した「アナ(5才)」が、出産するための獣舎である産室に12月23日に入室しました。
 
野生のヒグマは厳冬期となる1月~2月に冬眠穴の中で出産をし、春まで穴の中で育児も行います。のぼりべつクマ牧場での飼育下繁殖でも出産時期は同様です。ただ、巣穴が作れるような土の豊富な環境は飼育施設内にはありませんので、のぼりべつクマ牧場には巣穴を模した「産室」という半地下の個室があります。出産を行うために作られた獣舎で、野生ヒグマが利用しているような巣穴のサイズと同じような小さな部屋です。
 
野生ヒグマの巣穴の中は落ち葉が満たされていますが、産室の中はと言いますと、ワラが敷き詰められています。このワラがとても重要になってきます。巣穴や産室は半地下なので氷点下にはなりづらいのですが、やはり周囲は体温よりは冷たくなっています。露出した地面や壁との接触は体温の低下を招く要因となってしまいます。そこで落ち葉やワラは断熱材として活躍し、保温の役割を果たします。産室内の母グマは与えたワラでベッドをつくり、赤ちゃんが寒くならないように良い状態を保とうと工夫しています。ワラを産室の中央に集めて厚みを出したり、噛んで細かくしてフワフワにしたりしています。
 
現在、スミリとアナは産室で落ち着いており、ワラを整えて冬眠の準備をしているようです。ワラの状態はばっちりです。あとは待望の出産を祈るのみです。
 
ヒグマの人工授精
ヒグマの人工授精は世界でもまだ成功例がありません。今年アナが出産すれば世界初となるのですが、今までも何十年にもわたって研究を継続していますが、なかなか成功していません。ヒグマの繁殖メカニズムは分かっていないことが多く、人工授精をするに際して未だ課題が多く難航しています。毎年、改善を重ねながら、手探りの状況で北海道大学と共同で人工授精の試行をしています。今年こそはと毎年思っていますが…。令和二年、今年こそは!

きょうのくまさん

年下のフク・サスケ(5才)と3頭で暮らしています。3頭の中では一番毛の黒いのが特徴的。名前の由来はフィギュアスケートの羽生結弦選手から名づけられています。まだ羽生選手ほどファンはいませんが、同じ位ファンができると期待しています。
今年はメスのスミリとペアで暮らしていたので、来年はお父さんになっているかもしれません!待望のユヅルベビー誕生なるか!?
 

ユヅル♂(6才)

ノビタの採血トレーニング近況

ツキノワグマのノビタ(22才)は昨年の7月に体調不良のため検診したところ、腎機能の低下が疑われました。定期的に血液検査をして腎臓の状態を把握する必要がでたため、採血のトレーニングをすることにしました。
血液を取るたびに麻酔をかけるのは腎臓の悪いノビタに負担がかかってしまうので、麻酔をかけずに採血をするトレーニングです。トレーニングといってもすぐに針を刺すとノビタもビックリしてしまいます。そこで、棒などで採血部位となる爪と爪の間を触っていき慣らします。今ではフォークで採血部位を触ったりしていますが、嫌がることは減ってきています。
 
期待通りしっかりと待機出来た時には、ノビタの大好きなハチミツやジャムをあげています。今後定期的に確実に血液が採れるよう、私たち飼育員とノビタの二人三脚で頑張っていきたいです。
 

採血トレーニング中のノビタ=12月26日、ノビタ獣舎

クレーンとヒグマ(資格取得完了!)

11月の玉掛け技能講習に引き続き、12月16〜17日、飼育員の吉見がクレーン特別教育に行ってまいりました!
 
今回は、丸一日学生のように授業を受けた後、実際にクレーンを使って大きな物を移動させる実習がありました。クレーンと言っても様々な種類のクレーンがある事を皆さんご存知ですか?ジブクレーンやケーブルクレーン、アンローダなどなど覚えきれない程沢山の名前があります。今回の実習で使用したのは天井クレーンというものです。
クレーンに繋がるリモコンには、東西南北と書かれており、行きたい方角のボタンを押すと動きます。2方向のボタンを押すと、縦横だけでなく、なんと斜めにだって動きます!そして、重たい荷物を吊って移動させていると、振り子のように荷物がゆらゆら動いてしまいます。そんな揺れをうまく止める方法を今回講師の方が実践してくれました。さすが講師の方です。安定感が抜群でした。
 
のぼりべつクマ牧場では輸送オリに入ったクマをクレーンで移動させることもあります。暴れん坊のクマはオリの中を沢山移動するので大きく揺れます。そんな時に使えるなーなんて思いながら私も実際にやらせていただきましたが、これが意外と難しいんです。コツを掴むまで練習あるのみ!実習を終え、無事にクレーンを動かす資格を取得しました。髪をなびかせクレーンをほいほい動かしてる飼育員を見かけたらそれは私です。是非探してみてください!
 

クレーン運転中の飼育員=12月21日、飼料庫

のぼクマ劇場

なる作


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