のぼりべつクマ牧場通信 30号(2019年12月)

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体格良すぎて惚れ惚れ 冬支度、異例の早期完了

栄養を蓄え巨大化した若いメス、ツムギ(6)=11月22日、第二牧場


ヒグマは健康に太る?
北海道の冬は氷点下が続く厳しい寒さとなるため、野生のヒグマは冬眠をして冬を越します。冬眠を無事に終えるためには厳冬期までにしっかりと栄養を蓄える必要があり、ヒグマは多量の脂肪を皮膚の内側や内臓に蓄積させて冬を越す準備をします。のぼりべつクマ牧場でも、冬には大きく気温が下がるため、同様の季節変化を経験してもらっています。
 
気温が氷点下になる12月頃までに1頭1頭の食欲の変化をみながら、気温などの環境の変化に合わせて餌量を増加させる調整をしています。今年は食欲に合わせて例年よりも半月ほど早く餌量を増加させる試みを行いました。すると、餌量を増加すればするほど、みるみるうちにヒグマの体は丸く、大きく、ぷるぷるとした体格になっていきました。歩くとお腹の皮膚がブルブルと揺れるほどです。
今年の早期餌量増加の試みで新たな変化も経験しました。例年に発生していた飼料の著しい急増が緩やかになったのです。急増させていた例年に比べ高齢個体も早期に良い体格になっており、安定して栄養を蓄えられたようです。
 
しかし、「そんなに太らせても不健康にならないの?」と感じた方もおられるかもしれません。人を含む多くの哺乳類では肥満になると「脂肪肝」という病気になることが知られています。脂肪肝とは脂肪が肝臓に蓄積し悪い影響を与える病気です。しかし、ヒグマは太ってもこのような病気にはならないことが知られています。この健康に太る能力は、大学などが脂肪肝を防ぐメカニズム解明に向けて、研究を行っているほど貴重な能力です。長い進化の過程で獲得した秋に太る能力は私たちの「太る」とは少し異なっているようです。

 

きょうのくまさん

胸に白い模様があり、性格は少しびびりなクマさんです。名前の由来は野球選手の大谷翔平さんです。若さと可愛さの二刀流で今後のスター誕生に期待です
 

ショウヘイ♂(2)

エブリデイ!エンリッチメント

ツキノワグマのノビタ(21)にタイヤをあげてみました。ただのタイヤではなく、タイヤの中に餌が隠されています。始めは中の餌を食べづらそうにしていましたが、餌の取り出し方が分かると、上手に食べてくれていました。ノビタは他のクマと異なり、少し面白い食べ方をしています。タイヤをかぶって上から落ちてきたものを食べています。この姿が実に可愛いです。飼育員も癒されます。
 

タイヤをかぶるノビタ=11月19日、ツキノワ獣舎

クレーンとヒグマ(資格取得に向けて)

のぼりべつクマ牧場では70頭以上のクマを飼育しています。そのクマ全頭に毎日餌をあげる事は飼育員の大切な仕事です。しかし、クマたちは体の大きさ通り、餌をたくさん食べます。そんな、たくさんの餌を運ぶ際に実は「クレーン」を使っています。
 
クレーンを扱う時には機械の知識や資格が必要です。その資格を新たに得るために先日、私、飼育員の吉見が講習へ行ってきました。
「玉掛け(たまがけ)技能講習」というもので、大きなクレーンを動かす時にフックにつり荷をかける資格です。講習では機械の扱い方や合図の出し方、目測の仕方も学びました。講習には「物理学」の授業もありました。物理学ではクレーンで物を吊るときの重心のかかり方、物質による密度の違いなど学びました。無事に試験にも合格し、「玉掛け」の資格を取得することができました。しかし、玉掛けだけではクレーンを扱うことはできないので、12月には「クレーン特別教育」という講習にも参加してきます。
かっこいい女性、クレーンのプロを目指します。
 

クレーン作業中の飼育員=11月15日

今月の飼育員のベストショット

「あくびちゃん」 撮影者:松本

飼育員卒業 編集長が語る思い

飼育員は見たべあ!21号(平成31年3月)より編集長を任されました飼育員の舩橋です。私の編集担当期間も、当新聞をご愛読頂きありがとうございました。
私はそれまで記事を書くことを経験したことがありませんでした。全体の構図を任せてもらっていたため、記事は自由に書かせて頂きました。経験を重ねると最初は四苦八苦していた原稿作りも、しっかりと後任にアドバイスができるまでに成長することができました。
 
飼育員目線で発信している動物園・水族館で見かける情報誌。私はどの動物園・水族館の情報誌よりも、面白く、分かりやすい新聞を作ってきた自信があります!今後ものぼりべつクマ牧場の飼育員が発信する「飼育員は見たべあ!」を引き続きご愛読頂けると嬉しいです。
 

飼育員は見たべあ!の原稿作成中=11月18日

のぼクマ劇場

なる作

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