のぼりべつクマ牧場通信 21号(2019年3月)

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産室に響く6頭のコーラス

母グマのシズクとその胸元で元気に動く子グマ2頭=2月5日,産室,赤外線カメラによる撮影

産まれる時は一斉に!? 若グマたち育児に初挑戦

昨年の12月23日から5頭が産室入りしました。初めて出産準備をする4頭も、巣材(ワラ)できちんと寝床を作り落ち着いた状態で過ごしていました。いつだれが出産してもおかしくない状態で、出産の時期を迎えました。
 
トップを切ったのは初産室のマリンでした。1月16日の午前、マリンの部屋から子グマ1頭の声が聞こえました。小さいながらささ鳴き(※)も聞こえました。出産直後の母グマはとても神経質になっています。そのため母グマが落ち着くまでの産後数日間は、目視での観察や給餌はせず、できるだけ母グマを刺激しないようにします。そして、音だけを頼りに産室内の様子を探ります。2日後には2頭目の子グマの声が聞こえたような気がしましたが、はっきりとは分かりません。ようやく3日目の観察で、ギャーギャーと元気に鳴く2頭の子グマの声が聞こえました。
 
マリンに続き、ツムギも同じ日に出産しました。午後の観察のとき、ツムギがモゾモゾ動く様子がありました。鼻息が数回聞こえた後に子グマの声が聞こえてきました。しばらくギャーギャー鳴いていましたが、母が抱いたのか静かになりました。翌日には、ささ鳴きとギャーギャーと鳴く声が同時に聞こえて、ツムギも2頭出産していたことが分かりました。
 
マリンとツムギの出産から2日後の1月18日には、シズクが出産しました。午前に産室の観察をしていたところ、子グマの鳴き声が聞こえてきました。シズクの部屋には観察カメラを設置しています。モニターを見てもシズクは全く動きませんが、室内からはシズクが子グマの体を舐めるような音と、子グマのかすかな鳴き声が聞こえました。1月21日の観察では、2頭分の子グマの声が聞こえてきました。合計で3部屋から6頭の子グマの声が確認できました。
 
産室には子グマたちの元気な鳴き声が、毎日響き渡っています。母グマがちゃんと子育てしていることが分かり、飼育員たちも安心して見守っています。誰にも育児を教わっていないのに、初めての出産でしっかり子を育てられる母グマの逞しさを感じます。まだ産んでいないベテランのトルエや、マリンたちと同じく初産室のマロンも、形のいい巣を作り状態もおちついています。今後さらに産室がにぎわいそうで楽しみです。
 
(※ささ鳴き:子グマが母グマに授乳を求める鳴き声のこと)

クッタラ湖の今日この頃

湖面が凍り始めたクッタラ湖=2月11日


のぼりべつクマ牧場の2月は冬真っただ中です。気温は毎日氷点下で、景色にも至る所に真冬を感じます。注目したいのはクッタラ湖です。全面凍結はしませんでしたが、その分1日を通して異なる表情を見せてくれます。夜間に冷え込んで凍った部分が広がる朝は、氷に雪が積もって白く化粧したところと、まだ凍っていない濃い青が入り混じった姿をしています。
 
しかし、朝日が昇って気温が上がると、まだ薄い氷が溶け出して、白い化粧が小さくなっていきます。場所によっては氷が風に流されて、白が移動したりもしています。冬のクッタラ湖は、1日の中でこのような姿の変化もみせてくれます。湖面で白や青が動いたり大きさを変えたりして、まるで湖が生きているようです。

エブリデイ!エンリッチメント

大雪のある日の開園前の事でした。第一牧場には特に好奇心旺盛なカンタ(12)がいます。この日のカンタは、朝から特製のぶら下げタイヤに夢中でした。雪景色の中、頬をタイヤにスリスリして遊んでいました。するとそれにつられてか雪の影響か、ほかのクマも活発になっていました。
 
第一牧場の裏ボスとも呼ばれる大きな体のナッツ(12)は、鉄骨擬木のお立ち台に登って一人遊び。消防ホースのおもちゃで綱引きをしていました。カンタもナッツも気まぐれな性格ですが、飼育員お手製のおもちゃが大好きなようです。雪がたくさん降ると、クマたちはテンションが上がっています。若いクマは飛び跳ねながら嬉しそうに駆けっこしたり、顔を雪にうずめたり楽しんでいます。朝から氷点下で元気に遊ぶクマを見られたら、何か良い1日になりそうな気がします。
 

お立ち台に登ったナッツ(左)とタイヤで遊ぶカンタ(右)=2月6日

ノビタ白内障手術その後は?

坂を駆け降りるノビタ=2月20日


ノビタはリハビリも順調に進み、今では色々なものが見えるようになりました。飼育員がそばに来ると、目でしっかりと見て近寄ってくるようになっています。また、飼育員が左右に移動すると、それに合わせてノビタも追いかけてきます。最近ではオスの特徴的な行動の一つである「背こすり」をするようになりました。また、木材に穴を開けてハチミツを塗ったおもちゃをノビタの部屋に入れています。初めのうちはハチミツの取り方が分からず木材を粉々にしていました。今ではハチミツだけを器用にとっています。食べ終わった木材も転がしたり、投げたりして遊んでいます。

のぼクマ劇場

なる作


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