のぼりべつクマ牧場通信 20号(2019年2月)

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若きクマたち初出産なるか

まるまると肥えたクマたち=写真上からシズク、マリン、ツムギ

産室に初々しい反応見せる

12月23日から5頭のメスグマが産室へ入りました。5頭中4頭のクマが初めての産室入りです。
最初に入室したのは初めてのマロン(6歳)でした。初めて行く場所でも怖がること無く、難なく入室できました。出産経験のあるトルエ(20歳)は慣れたようすで入室しました。マロンと同じく初めて産室に移動するマリン、シズク、ツムギ(6歳)は、訪れたことのない場所に警戒していました。好物のサケで誘導するも、栄養状態がよくお腹が空いていないのか、うまくいきませんでした。
仕切り直して、マリンとツムギの入室を試みました。警戒しつつもマリンが入室すると、ツムギも続けて入室しました。シズクは最も警戒していましたが、時間をかけて無事入室することができました。
 
出産に向け新たな取り組み
野生のエゾヒグマは冬ごもりに向けて、秋から食欲が増します。のぼりべつクマ牧場でも、一昨年までクマたちの食欲が増加する秋ごろに餌を多く与えていました。繁殖には栄養状態が深くかかわっていることが既に知られています。妊娠の可能性のあるメスグマはほかのクマ以上に気を使って餌を与えていました。しかし、秋ごろから餌の量を増やしても、冬までに充分に栄養を蓄えられていない個体がいることが分かりました。
 
今回の繁殖個体は7月ごろから餌量を他のクマと区別して管理しました。7月ごろはガツガツと勢いよく食べていましたが、秋も終盤になると常にお腹がいっぱいの様子でした。餌に好物のどんぐりを混ぜて与えても残すほどです。そのおかげで、これまでにないくらい栄養状態がよくなりました。
 
産室に入ってすぐ、取り組みの成果と思われる反応が見られました。5頭に念のため餌と氷を与えましたが、手をつけない日が続いたのです。これは栄養状態が最適であった結果と考えられます。敷かれたワラの上で全く動かずに寝ており、野生のクマの冬ごもりに近い状態となりました。冬ごもりのようになった個体は刺激をできるだけ与えないよう、そっと観察のみ行っています。
 
今年はシズクとマロンの産室に観察カメラを設置しています。観察カメラの映像は常にモニターで確認することができ、録画もしています。個体によって状態がさまざまですが、出産しそうな雰囲気が漂っています!
※氷は気温が氷点下のため、飲み水の代用。
 

観察カメラに映る巣を整えているシズク=1月7日、産室

エブリデイ!エンリッチメント

無数の穴から…
円柱上の木材に穴を開け、その中にジャムやハチミツなどクマの好物を入れたおもちゃが登場。ツキノワグマのノビタとナナは、このおもちゃがマイブームのようで、毎日遊んでいます。遊びに夢中になりすぎて破壊してしまうほど!
 

穴を開けた木材と氷漬けにした果物=1月18日

突撃!! インタビュー

このコーナーでは働いているスタッフにスポットを当て、普段聞くことのできない裏話やエピソードを突撃取材!
 

坂元秀行さん(53)


(リポーター) 第5回突撃インタビューは、この道一筋30年の坂元秀行飼育員にお話を伺います!坂元さんは北海道出身でしょうか?
(坂元さん) 出身地は兵庫県神戸市です。
(リポーター) 道外出身なのですね!30年以上勤めているということは、北海道の生活の方が長いということですね。海を越えてまで飼育員になりたいと思ったきっかけは何ですか?
(坂元さん) 小学生のときから動物園が好きで地元の動物園によく通っていました。そのころから飼育員になりたいと思っており、卒業文集にも志しをつづりました。しかし、中学校卒業のころに船乗りの道を目指そうと思いました。ですが、航海士は視力が一定以上必要なため諦めました。そしてまた、飼育員の道を目指しました。
(リポーター) 紆余曲折し、今があるのですね。これまで何百頭というクマを飼育してきた中で、特に思い入れのあるクマはいますか?
(坂元さん) 一番好きなクマは、エゾヒグマの「クララ」です。入社して3年目に生まれたクマで、当時行われていたアイヌの儀式『イオマンテ』を再現するイベントに参加していたクマです。他のクマとは違い個別飼育していため、クララとはとても仲良しでした。あと、入社当時のボスグマ「フミオ」も思い出深いクマです。
(リポーター) クララへの熱い思いが伝わってきました・・・!当時はそのようなイベントがあったのですね。では他の質問ですが、大変な仕事は何ですか?
(坂元さん) 昔はもっとたくさんクマがいたので、飼料の調達が大変でした。また、若いころは平気だった力仕事も、最近は大変になってきましたね(笑)。あと、冬の除雪作業も大変です。
(リポーター) とても大変そうです。飼育員の仕事は動物の仕事だけではないのですね。では、楽しい・嬉しい作業は何でしょうか?
(坂元さん) クマの解説です。お客様が熱心にお話を聞いてくれたときは、とてもやりがいを感じます。あと子グマが生まれたときは、とてもうれしいです。
(リポーター) 飼育員と同時に学芸員でもある坂元さんのお話は、とてもためになります!今年も子グマが生まれてくれるといいですね。では、最後にひとことお願いします。
(坂元さん) プライベートで手話を学んでいるので、聞こえない方には手話で解説もしています。園内で見かけたら、遠慮なく声をかけてくださいね!
 

氷柱オブジェ「こぐま牧場が凍りました」

1月9日から子グマ牧場に氷柱オブジェが出現しました。その名も「こぐま牧場が凍りました」。子グマが飼育されていた展示場が、北海道の厳しい寒さで別世界になりました。
冬季閉鎖している子グマ牧場を活用するために散水したところ、想像以上の作品が誕生しました。散水は12月31日から開始し、1月8日まで行いました。3日ほどで形になり順調かと思いきや、氷柱が折れるなどトラブルに見舞われましたが、無事に完成しました。展示は氷柱オブジェが溶けるまで行います。山の冷えこみが生んだ天然の芸術作品をご覧ください!
 

のぼクマ劇場

作:Dr.M

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