冬ごもり ~北海道に生きるクマの知恵~(12月8日・9日実施)

ヒグマは冬になると食べられるものがなくなる為、冬眠をします。ヒグマの冬眠は飲まず食わず過ごし、少しの物音でも起きてしまう浅い眠りです。まるで巣穴にこもっているだけに見える様子から「冬ごもり」と呼ばれています。
北海道に生息しているエゾヒグマは、根雪になる12月頃から3月頃まで冬ごもりをしています。約3か月もの間寝たきりですが、冬ごもり明けすぐに元気に走りだし、木登りもできちゃうほど筋力は衰えていません。
 
しかし、のぼりべつクマ牧場のヒグマたちは冬もエサを食べています。また1つの部屋に集団でヒグマを飼育することで多くの刺激がある為冬ごもりはしません。
牧場内では雪遊びや仲良しのヒグマ同士で固まって寝ていて、冬にしか見られないヒグマたちのかわいい姿を見ることができます。ヒグマたちが雪遊びしている姿を見てお客様から「楽しそう」と言う声と「寒くないのかな」と言う心配の声も聞こえてきます。ヒグマは冬に短く縮れた毛がたくさん生えてきます。この毛が生えることで毛と毛の間に熱がこもり、北海道の寒い冬でも元気に雪遊びをすることができているのです。
 

雪の中、元気に遊ぶ子グマたち


そのようなのぼりべつクマ牧場でも一部のヒグマのみ冬ごもりに近づけています。それは妊娠中の個体です。
ヒグマは冬ごもり中に飲まず食わずの状態で出産・授乳をします。うまく妊娠できたメスグマは冬になると、産室と呼ばれるクマが落ち着いて出産できるように整えた部屋へ移動します。出産した母グマは春まで産室で赤ちゃんの世話をしています。 
 

産室内のクマの様子


体重が約200kgの母グマから生まれてくる赤ちゃんの体重はわずか400gほどです。なぜこれほど小さく出産をするか不思議ですよね。
母グマは冬ごもり中に飲まず食わず授乳をする為、エネルギーを節約しなければなりません。赤ちゃんを小さく産むことで与えるミルクの量を少なく済むようにしています。またミルクも節約するための工夫をしています。それは体に蓄えてある脂肪をミルクに混ぜることです。秋に冬ごもりに向けたくさん食べて蓄えた脂肪をミルクに混ぜているのです。
実際に私がヒグマ用粉ミルクを舐めた時、甘味はありませんがととても濃厚なミルクでした…。
 
他にも小さく産むためにクマはあるワザを使っています。それは「着床遅延」と言います。
ヒグマの場合、初夏に当たる5~6月頃に繁殖期が来て交尾をします。受精卵はできますがまだ着床はしません。秋の食い溜めの時期でしっかり栄養が蓄えられた母グマのみ着床して赤ちゃんを産めるのです。もし冬までに充分に栄養が蓄えられてない母グマが、冬ごもりに出産すると冬を越せなくなってしまうからです。ヒグマたちの生きる知恵に感動ですね。
 
冬眠と言うと春まで寝たままでいいなと思う方もいるかもしれませんが、見えていないだけで忙しいクマもいるのです。
今年も残すところ後わずかとなりました。寒さに負けずに頑張りましょう。