ポイント:
①各クマの好物を舐めさせているうちに注射針を刺す
②格子から出た指や前肢の血管から採血
解説:
「ハチミツ採血方法」とは、ヒグマがスプーンのハチミツ水溶液を舐めているうちに、針を刺し採血をするという方法です。
(動画による解説はこちら https://youtu.be/c4EbhCoJ7wE)
この採血に用いてるスプーンには少し工夫があり、棒の先にスプーンと細いチューブをつけており、手元の50mlシリンジに入れたハチミツ水溶液がスプーンに流しつづけられるようになっています。
スプーンのついた棒を誘導したい場所へ動かすことで、ハチミツを舐めているヒグマの頭の位置や姿勢を容易に調整することができます。
ヒグマの頭の位置を調整し、起立させるような姿勢にすると、体重を支えるために格子に前肢をかけます。
その格子から出た前肢の指や前肢の外側(手の甲にあたる部分)に、翼状針(指先で持つ部分が翼の形になっている注射針)を刺し、採血を行います。
スプーンを前肢で獲ろうとするヒグマもいますが、その行動を利用し、獲ろうとして前肢を格子から少し出した瞬間にスプーンを口元に持っていき、前肢を出したままハチミツを舐めてもらうパターンもあります。
クマが夢中で舐めている溶液については、ハチミツ以外でも液体状であれば何でも可能です。
「だし汁」や「スポーツドリンク」、「ジャム水溶液」など、各クマの好みに合わせて調整することで、クマの集中力を高めることができます。
また、溶液の性状については、粒など固形のものが混ざっているとチューブが詰まったり、気温が低いときに濃いハチミツだと硬くなってしまうため、流し続けることが困難であったりもします。
スプーンの動かし方も重要になりますが、溶液の種類や性状も重要なポイントになります。
ハチミツ採血は無麻酔で採血をする方法であるため、一見、イルカやアシカなどで盛んに取り組まれているハズバンダリートレーニングと同じようですが、異なる部分もあります。
ハズバンダリートレーニングでは飼育者側が求める目的の姿勢や行動があり、そこに向けて動物が学習を経ながら行動を形成していくという「動物側が飼育者に合わせてくれる」トレーニングですが、
ハチミツ採血は、動物の自発的、自然な行動に飼育者が合わせて採血を行うという「飼育者が動物側に合わせていく」トレーニングです。
どのような姿勢でも、どのような部位でも採血を行う技術は求められますが、70頭のヒグマの採血を実現するには、効率的な方法です。
動物の自然な行動の範囲での採血ですので、学習していなくともチャレンジ初日から採取できることもあります。
一方で、学習を経て強固な行動形成をしているわけではないので、個体によっては安定しないというデメリットもあります。
各クマの好みを把握していくことは、ハチミツ採血において大変重要な要素ですが、クマ毎にそれはハチミツ採血だけでなく、クマの福祉向上に大きく寄与する姿勢になってくるかと思います。