エンリッチメント大賞2022「努力賞」を受賞!

この度、のぼりべつクマ牧場 動物課はエンリッチメント大賞2022「努力賞」を受賞しました!
これに合わせて、のぼりべつクマ牧場通信『飼育員は見たべあ!』 号外を発行!
ぜひご覧ください♪

(↑クリックでPDFをダウンロード)

エンリッチメント大賞2022 努力賞を受賞

動物福祉の向上を評価

のぼりべつクマ牧場 動物課は、様々な課題を抱えながらも持続的かつ前向きに取り組む姿勢が審査委員より評価され、エンリッチメント大賞2022にて、「大賞」に次ぐ「努力賞」を受賞しました。

獣舎内でエンリッチメントを楽しむピリカ(1)

エンリッチメント大賞?

エンリッチメント大賞は、動物園・水族館に対する社会的な意識を高め、環境エンリッチメント(飼育動物たちの生活環境を豊かにするさまざまな工夫・試み)を推進するため、市民ZOOネットワークにより創設されました。2022年度で21回目となります。今年は全国から32件の取り組みに対して推薦がありました。そのうち11件が一次審査となる書類選考を通過し、主催スタッフによる現地調査を経て、9月18日に二次審査となる審査委員会がおこなわれました。

その結果、大賞に次ぐ努力賞にのぼりべつクマ牧場の取り組みが選ばれました。動物福祉の向上に継続して取り組む現場の飼育員の地道な姿勢や、過去の予想を上回るような発展、他園館への波及力、将来の展望まで示される点を高く評価していただきました。特に、エンリッチメントの実践においては実施した内容を客観的に評価し次の取り組みにつなげていくという科学的な仕組みを体現していることも評価されています。

地道な取り組み

この度、努力賞を受賞したのぼりべつクマ牧場の取り組みは、高い技術が求められるものや、高額な設備が必要なものではありません。多くの課題を抱えるクマの飼育施設がマネをしやすいような経済的かつ簡略的な取り組みです。そして、展示場だけではなく獣舎内での取り組みであることが特徴です。その体制が構築されるまでには大変長い道のりがありました。

今では、獣舎のなかでいろいろな餌や器具を用いて、クマに複数の選択肢を提供し、多様な行動を促せるように試行錯誤を繰り返していますが、当初は、まず餌を広く撒いてみるだけの試みでした。

現在獣舎内で用いているエンリッチメントの備品

取り組みの科学的結果

のぼりべつクマ牧場では、ハチミツやジャム、制汗剤スプレー、消防ホース、廃タイヤなどを用いて、獣舎内に様々な刺激や選択肢を提供するよう取り組んでいます。その取り組みは、その日に何のエンリッチメントを実施するか記載したカレンダーを用いて、月ごとにあらかじめ計画されたものを実践しています。

11月に用いられた実際のエンリッチメントカレンダー

やれるならなんでも良いということではなく、クマの行動や反応を記録しながら、その結果に応じた計画を立てています。ではどのように70頭もいるクマの行動を記録していくかといいますと、全てのクマがいる場所を巡回しながら、記録用紙にクマが何をしていたか、正の字で記録していく方式をとっていました。この記録を1日1回継続しています。

その結果、クマがどの季節にどのような行動が増えるのかなども分かってきました。コンクリートの人工的な環境ではありますが、野生のクマと類似した季節変化が飼育下のクマでも確認でき、特に繁殖期においてストレスが大きいことが疑われる結果が確認されました。繁殖期には異性との出会いを望んでいることが容易に推測できます。そこで、オスもメスも飼育していることを活かして、異性の毛や糞を利用することを試みました。

ヒグマの糞(左)と抜け毛(右)

それぞれの獣舎に異性の毛や糞を提供すると、試行前の年に約14%もあった繁殖期の異常行動割合は、約4%にまで減少しました。これらの異常行動割合の減少をエンリッチメント大賞の審査委員の方々には高く評価していただいています。

2年間の70 頭の行動記録のグラフ:異常行動(緑)の減少が確認できる

また、継続性という面でコストパフォーマンスにおいても検証しています。採食時間を経費で割った数値を算出し、グラフで比較したことについても高い評価を頂きました。

各給餌方法とコストパフォーマンスを示したグラフ:消防ホースの数値が高いのが確認できる。

12月3日には東京大学のホールにて、表彰式・受賞者講演会が開催されました。多くの方に、のぼりべつクマ牧場の取り組みを知って頂く機会になり、動物たちの福祉向上につながれば幸いです。

表彰盾と飼育員=12月6日

今の一くま