ヒグマの出産(1月13日・14日実施)

 新年あけましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い年となることを願っています。2018年第1回目のレクチャーは「ヒグマの出産」についてお話をしました。   
 


 
冬になるとヒグマを見かけなくなりますが、何をしているのか不思議に思った方もいると思います。
ヒグマは冬になると冬眠をしています。クマの冬眠は少しの物音で起きる様な浅い眠りで巣穴にこもっているだけに見える様子から冬ごもりと呼ばれています。この期間は全く飲まず食わず過ごしています。そのため、秋になるとたくさん食べて脂肪を蓄えます。蓄えた脂肪を少しずつ使い、春まで巣穴にこもっています。
驚くべきことに妊娠しているメスグマは、この冬ごもり中に出産をするのです。

 

なぜわざわざ冬ごもり中に産むか不思議ですよね。冬ごもり中に産むことでお母さんは、巣穴から出ずに赤ちゃんにミルクをあげています。また巣穴の中にいるため外敵に襲われる心配がないので、冬に産むことがクマにとっては都合がいいのです。
産まれたばかりのヒグマの赤ちゃんは、体重が約400gとたいへん小さく産まれてきます。これは赤ちゃんを小さく産むことによって、冬ごもり中に与えるミルクの量を少なく済ませるためです。そのためお母さんグマは赤ちゃんにあげるミルクにもある違いがあります。秋の食い溜めで蓄えた脂肪からミルクをつくり、水分の割合を少なくすることでエネルギーの節約をしているのです。

 

ヒグマの発情期は5~6月頃で、出産時期は1~2月頃です。約半年間もの妊娠期間があるのに産まれてくる赤ちゃんはわずか400g程というは不思議ですよね。実はお母さんのあるスゴワザが隠れていたのです。
交尾をして卵子と精子がくっついた受精卵はある一定のところまで成長すると成長が止まり、着床もしないまま子宮内を漂っています。そして秋に充分に栄養を蓄えたメスグマのみ受精卵が着床して再び成長し、冬に出産をします。この交尾をしてから出産までの時期を遅らせることを着床遅延と言います。赤ちゃんが実際に成長している期間は約2か月しかありません。そのため夏に交尾していても冬にとても小さな赤ちゃんを産むことができているのです。
 

のぼりべつクマ牧場では、繁殖のときには血統書を参考にしてペアを形成します。近い血統の個体同士がペアにならないように、クマ牧場のクマたちは血統管理を行っているのです。
クマが出産する際は、「産室」と言って出産のために整えられた部屋で過ごします。産室は野生ヒグマの、冬ごもり穴に近い環境になっています。
産室の中で出産し無事に育った子グマたちは、春には子グマ牧場へとデビューしていきます。

 

 

 クマの出産は奥が深く、もっと知りたい気持ちになれますよね。さて次回はどんなお話が聞けるのでしょうか。お楽しみに。