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バックヤードで冬眠中…
これまで第二牧場では冬も成獣の雌グマを展示していましたが、今季は若齢個体である2~4歳の雌グマを展示しています。成獣のクマ達は引退したわけではなく、獣舎の中で冬眠しているため、今は元気ハツラツに遊ぶ若いクマ達を皆さんに見て頂いています。
では、冬眠しているクマ達は獣舎の中でどのように過ごしているのでしょうか。基本的には1日を通して、寝て過ごしており、飼育員はクマ達を刺激しないように静かに獣舎に近づき、獣舎内での状態を確認しています。
寝ているクマの獣舎には、巣材として消防ホースを入れています。消防ホースは自然素材の稲ワラと比較すると柔らかさは劣りますが、フンやエサで汚れてしまった場合にもすぐに洗う事ができ、クマたちにきれいな巣材を提供することができます。
また、冬眠をしていても、日中に起きるクマもいます。目覚める理由は個体によって様々なので、それぞれの欲求に合わせてエンリッチメントの内容を変更します。睡眠の欲求が高い個体には巣材用に消防ホースを追加し、食べ物への欲求が高い個体にはハチミツ水を凍らせたものを与えたりします。
他の寝ているクマに影響が無いよう、極力匂いが出ないような食べ物を与えることもあります。このようにクマの欲求を行動から読み取り、その欲求を満たすアプローチをする管理方法を冬眠期でも行っています。
きょうのくまさん
今年で1歳になった若いクマです。同世代の中では飛び抜けて体が大きく、キリっとした目は男前。その反面、性格はとてもかまってちゃんで好奇心旺盛。気になる事は警戒しながらも触れてみたりと、何事もチャレンジタイプのクマです。子グマ牧場時代は飼育員が大好きで、遊んでほしそうにじゃれつく時もありました。現在は、放飼場に出ると他のクマが日向ぼっこやお昼寝している所へ邪魔するように遊びに誘い、とても活発に動いています。誰とでも分け隔てなく仲良くできる友好的なクマです。
エゾヒグマの秘密
ヒグマの五感の中で、最も優れているのは「嗅覚」というのはご存じの方が多いと思いますが、視覚はどうなのか気になりますよね。結論からお話すると、嗅覚に比べるとあまり良くはありませんが、動体視力は優れています。
のぼりべつクマ牧場のクマたちは、観覧台におやつを持ったお客様の姿が見えると、前肢を挙げたりセクシーポーズをしたりと、おやつへのアピールをします。
クマたちがいる牧場内からお客様のいる観覧台までの壁の高さは4.5mです。その距離の中で、1粒約3㎝のクマのおやつを観覧台から投げられてもパクっと口でキャッチできるクマもいます。もちろん優れた嗅覚で認識している可能性もありますが、匂いだけでキャッチするのは難しいと思います。お客様の動きに合わせて目線が動いているので、注目してみてください。嗅覚だけではなく、視覚も油断はできませんというお話でした。
クマの出産準備
2022年12月下旬から4頭のクマが産室に入りました。産室とは出産のための部屋で、野生のクマが冬眠・出産する巣穴により近い環境を再現しつつも、飼育管理しやすいように造られています。産室内には稲ワラがたくさん敷き詰められ、暗く静かな場所となっています。
産室に入ったトップバッターはエリカで、その後ホノカ、ラッキー、マリンの順に入っています。エリカ・マリン・ラッキーはクマの繁殖期である5月から7月の期間オスグマとの同居(ペアリング)を行っており、ホノカは人工授精での繁殖を試しています。人工授精とは、オスとの同居はなく、麻酔下で採取していたオスの精液をメスの排卵時期に合わせて注入する方法です。今回出産すると、ヒグマでは世界初の繁殖例となります。
今年の4頭は出産経験のあるクマが多いので、子グマの声が聞けることを楽しみに待ち望んでいます。
教えて!!Q&A
Q どうして日本ではヒグマは北海道にだけ、ツキノワグマは本州にしかいないんですか?○ペンネーム 「ぽんすけ」さん
A 数万年前、まだ日本列島がユーラシア大陸とつながっていたころ、大陸から渡ってきたヒグマの祖先が本州にも生息していました。また、現存しているエゾヒグマよりも体が巨大で、尚且つ肉食傾向がとても強かったということも分かっています。
なぜ本州のヒグマたちが絶滅してしまったのか、詳しい理由は未だ謎に包まれています。諸説ありますが、ツキノワグマとの生存競争に負けてしまった、温暖化により絶滅してしまったなどと言われています。