のぼりべつクマ牧場通信 37号(2020年7月)

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2020 ペアリング開始!

繁殖行動をするショースケ♂・ラッキー♀(左) まったり過ごすツララ♂・ホノカ♀(右)=6月19日


繁殖時期始動
2021年の子グマ出産に向け、今年は6月1日からペアリングを行いました。「ショースケ(オス)・ラッキー(メス)」ペアと「ツララ(オス)・ホノカ(メス)」ペアの2ペアです。
 
ペアリングとは、子グマを産むためにオスとメスを繁殖時期に同じ部屋へ収容し、繁殖時期が終わる8月頃まで生活を共にしてもらうことです。ペアにするクマは、飼育員の中で話合い、血統や相性、体格差などを考えて決定しています。ペアリングに選ばれなかったオス達も、当然繁殖時期なので、同じ部屋にメスがいなくても、嗅覚の優れたクマ達は、近くにメスがいることが分かり、ソワソワしています。なので、選ばれたオスは勝ち組状態です。
 
初日は、各ペアの反応に大きな違いがありました。「ショースケ(オス)・ラッキー(メス)」ペアはラッキーが興奮するショースケに少し引き気味でしたが、「ツララ(オス)・ホノカ(メス)」ペアはホノカが初ペアリングにも関わらず、落ち着いた様子でした。同居開始してしばらく経ちますが、今では2ペア共仲が良く、良い状態です。来年も子グマが産まれるか?お楽しみに!

子グマ名前決定!決定

2020年1月29日に誕生した子グマの名前が【エース】に決定しました。
例年であれば、来園したお客様による公募にて名前が決定しますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の為の休業期間中に伴い、飼育員による命名となりました。名前の由来は、新型コロナウイルスが細胞内に侵入する際にACE2(エース2)という受容体が関わっており、治療薬の開発にもこの仕組みが注目されているためです。新型コロナウイルスに負けず、未来の明るい日が来るという願いを込めて命名しました。好奇心旺盛で、活発な母スミリと、温厚で誰にでも優しい父ユヅルから産まれたエースが、今後どんなクマに成長するのか、目が離せません。
 

エース♀

再び光を見た「ノビタ」さようなら

2020年6月18日9時、ツキノワグマの「ノビタ」が享年22才で息を引き取りました。2018年に前代未聞のクマの白内障手術を終え、失明状態から復活したノビタでしたが、2019年夏より腎臓の機能低下が疑われ、薬や食事療法をおこなっていました。2020年6月17日に餌を食べなくなり、翌日息を引き取っています。死因は、病理解剖結果から「左心不全」とみられています。腎機能の低下は、心臓にも負担をかけることがあるため、これらの関連を調べるために大学で詳細の検査を行っています。
 

後肢起立で木をかじるノビタ=5月30日


ノビタのこれまで
ツキノワグマの「ノビタ」は阿蘇くま牧場で生まれ、1998年4月13日に、のぼりべつクマ牧場に来場しました。看板グマとして、当時行われていたショーに出て、三輪車を漕ぐなどをしてお客様を沸かせていたそうです。明確な記録はありませんが、いつしかノビタは眼の水晶体が白濁してしまう白内障を患うようになり、2000年代にはショーにも出られなくなっていました。視力が低下していくなかで、自力で餌を探すことや、広い放飼場に出ることが困難なため、自分の部屋のみでの生活を余儀なくされていました。
 
そのような状況のノビタに転機が訪れました。2017年に酪農学園大学動物医療センター眼科の「前原誠也」先生が往診に来てくださいました。そこから話は急展開となり、2018年夏には白内障手術を終え、再び光のある生活に戻ることができました。術後すぐは、見えることに驚いて、警戒する行動が著しくなっていましたが、術後3日目には、餌を目で見て食べているのが確認されました。見えるようになったノビタは、非展示の放飼場で、外の景色を眺めたり、丸太の遊具を使ったり、背こすりをするなど活発な生活を送っていました。見えるようになり、いろいろなものに驚くこともあったため、お客様の前に出てご覧頂くことはできなかったものの、ノビタの生活の質は大変向上していました。
 

ノビタが伝えてくれたもの
ノビタは、ツキノワグマでは前例のない白内障手術を終え、クマの白内障手術も不可能ではないことを教えてくれました。そして、クマの白内障手術の先に、生活の質の著しい向上があることも伝えてくれました。高齢動物のケアの在り方、人の温かさ、そして、クマの生命力の強さを力強く伝えてくれました。今頃、ノビタは天国で眩しがりながらも走り回っていることでしょう。ノビタ本当にありがとう。

遊歩道に看板出現!?

温泉街からクマ牧場のロープウェイ乗り場へ行くためには、車道の他に全長約130mの遊歩道があります。この少し長い道のりをお楽しみ頂くため、ヒグマのあるあるネタを元にした、到着までの距離を示す看板を6箇所に設置しました。ヒグマの習性を学べ、クスッと笑える看板をぜひご覧ください。
 

遊歩道に設置された看板=6月13日

のぼクマ劇場

なる作


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