「ヒグマフォーラム2017in登別」のご報告

2017年12月2、3日にヒグマフォーラム2017in登別が行われ、無事に終了致しました。のぼりべつクマ牧場は後援として参加させて頂いております。
ヒグマフォーラムとは、ヒグマの会が主催するフォーラムで、ヒグマの会会員および市民を対象としてヒグマについて考えるフォーラムです。今回のフォーラムのテーマは「ヒグマ飼育の未来~社会貢献と福祉~」です。1日目の12月2日はのぼりべつクマ牧場で施設見学を、2日目の12月3日 ヒグマフォーラムでは専門家による複数の講演がありました。

 

1日目【施設見学】

ヒグマの会40名様を対象に、のぼりべつクマ牧場でヒグマ飼育の取り組みや飼育下ならではの貴重な映像を紹介致しました。
吉見飼育員が、プロジェクターを使用して動画や写真を交えて日頃のヒグマの飼育管理について紹介致しました。中でも大量の餌や、見逃しやすいクマの跛行(はこう)動画、レントゲン写真のクイズ、こぐまの鳴き声の聞き分けの説明時に参加者は驚きの声を上げ、楽しまれていました。飼育の取り組み紹介後は、実際のヒグマの背こすり動画や、環境エンリッチメント器具に対するヒグマの反応、ハチミツを用いた無保定採血の動画等を松本獣医師が紹介。環境エンリッチメント器具で遊ぶヒグマの可愛らしい姿や、背こすり(クマのマーキング行動)を競い合うようにして行っているヒグマの様子等、飼育下だからこそ記録できた貴重なヒグマ達の姿に、ヒグマの会の皆様は興味津々の様子でした。

 

 

プレゼンテーションによる紹介後は、実物を用いて取り組みを紹介致しました。ヒグマの新生子の剥製や、ヒグマに咬まれて壊された鍋、大きな槍型の注射器等ヒグマに関する資料を手に取ってご覧頂き、貴重なヒグマ血液の顕微鏡での観察や、最も人気だった吹き矢体験コーナーでは実際にぬいぐるみに吹き矢を打つ体験もして頂きました。体験者はなかなか飛距離の伸びない吹き矢に「意外と難しい」と貴重な体験を楽しまれていました。
環境エンリッチメント器具に関しては実際に飼育員がどのように器具を作成しているのか体験して頂く為に、吉見飼育員と一緒に参加者の2名の方に消防ホースを用いた環境エンリッチメント器具を作成して頂きました。2名の方とも初めて触る消防ホースに「思っていたよりも固いし、重い。飼育員は大変な作業だ」「家の飼っている動物にも活かしたい」と感じて頂きながら、環境エンリッチメントについての理解が深まった様に感じています。
     
 



 

施設見学に参加されたヒグマの会40名の方々の中には、ヒグマの研究や管理を職業にされている方も多く、ヒグマが珍しい存在ではない方もおられますが、より身近なヒグマの姿や、飼育員の取り組みに興味津々といった様子でした。のぼりべつクマ牧場での飼育ヒグマに関わる飼育員の取り組みを深く知って頂く貴重な機会となりました。

 

 

【ヒグマフォーラム】

登別市婦人センターで開催されたヒグマフォーラムには70名程の市民が参加しました。坪田敏男会長(ヒグマの会)の挨拶で開始された今回のフォーラムテーマは「ヒグマ飼育の未来~社会貢献と福祉~」です。坪田会長は現在北海道大学でクマ等野生動物の研究をされていますが、学生時代はのぼりべつクマ牧場でヒグマの研究をされていた事もあり、のぼりべつクマ牧場での過去の活動に触れながらヒグマ飼育についての想いを語られました。

 

 

挨拶の後は、のぼりべつクマ牧場学芸員の坂元係長が「これまでのクマ牧場とこれからのクマ牧場」と題して、開園から現在までのクマ牧場での問題や取り組みを紹介。環境エンリッチメント等の取り組み事例を通して今後はどのような未来を描いているのか、飼育するだけでなくより良い環境を整えたいという想いを講演されました。

 

坪田会長は北海道大学教授として「飼育下でのヒグマ研究」も講演されています。飼育ヒグマでの研究データによって野生ヒグマの研究が進んできた事、飼育ヒグマ研究の歴史等を紹介。ヒグマの妊娠期間を延長する生理機構である「着床遅延」等もこの一つとして紹介頂きました。

 

サホロベア・マウンテン佐々木園長は「サホロベア・マウンテンの紹介と飼育の取り組み」と題して、野生ヒグマの生息環境に近い飼育環境での取り組みについて紹介。ベアマウンテンならではの取り組みとして、ヒグマの生態の特徴である「冬ごもり(ヒグマの冬眠)」を3か月にも渡って再現している事、闘争回避の方法等にも触れ、来場者は新しいヒグマ飼育の形態に興味津々といった様子でした。

 
最後の講演として国際動物福祉団体のWild Welfareプロジェクト責任者Georgina Allenさんが「世界における飼育クマの福祉」と題して講演しました。より良い飼育施設は教育に非常に力を入れていて、その結果種の保存に良い結果をもたらし、そういった施設は動物が自然に行動出来る為、来場者も惹き付けビジネス面でも利益を上げているという事例を紹介。国内では聞く事が出来ない貴重な講演となりました。

 

 

4名の方の講演後は総合討論を行っています。総合討論では、演者が来場者からの質問に答える形で、ヒグマ飼育の課題や未来像について議論しました。来場者からはクマの種類についてや、サホロベアマウンテンの飼育下の「冬ごもり」について、飼育員の方の飼育に対する想いへの質問等幅広い内容の質問が出ていました。中でもヒグマ飼育の現状改善に向けての具体的な方策についての質問もあり、現状と目標、今回のテーマでもあるヒグマ飼育の未来について様々な意見が交わされました。

 

ヒグマ飼育の未来についてのぼりべつクマ牧場でもしっかりと考え、クマに優しい未来へと進んで行きたいと思います。