今年のボスグマは「ダイキチ」に決定しました!
ダイキチは5年連続のボス就任となり、昨年の若さが目立つ血気盛んなボスの姿から経験も兼ね備えた余裕のあるボスの雰囲気ができています。就任年数は来年60周年を迎えるのぼりべつクマ牧場の長い歴史のなかで「マツ(9年)」、「ゴンゾー(7年)」、「フミオ(6年)」に次ぐ長さで、来年は12年ぶりに連続記録歴代3位に並ぶ可能性も出てきました。
5月の発情期に入り、成獣のオスの群れではボス争いにかかわる威嚇・攻撃行動やマーキング行動である「背こすり行動」、誇示歩行が見られましたが、今年は例年とは異なり、落ち着いたスタートとなっていました。昨年までのボス「ダイキチ」も昨年の血気盛んな態度から一変して、今年は全体を俯瞰しているような落ち着きを見せ、例年に比べて小競り合いが少なく感じていました。しかし、そのような緩やかな発情期の始まりの中で、突如としてボス争いの火ぶたは切られました。
春らしい陽気の5月21日、飼育員が「飛燕草の戦い」と名付けた争いがありました。この日の誕生花は「飛燕草(ひえんそう)」。花言葉は「自由」。それを知ってか知らずか、この日、自由のために立ち上がったクマがいました。その名は「マンタロウ」。彼は昨年、小柄な体格ながら巨大な「ダイキチ」に果敢に挑み、一度は勝利するも、万全を期したダイキチに返り討ちにあってしまったクマです。昨年「ダイキチ」が敗れたのは「マンタロウ」のその一度だけでしたが、飼育員は皆が驚き、長期に渡って安定していた「ダイキチ」政権に、ついに「政権交代」の文字がちらつきはじめましたかに見えました。
そして迎えた今年の5月21日、ヒグマの発情期真っ盛りのこの日に、打倒ボスを目指して再び「マンタロウ」は立ち上がりました。体格の差は今年も大きく、その差はおよそ100kg。まるで、大人と子供です。大きな体格差を補うべく「マンタロウ」はしなやかな身のこなしを武器に「ダイキチ」に挑みました。しかしボス「ダイキチ」は、今年は油断していませんでした。昨年以上に、権力を誇示する「背こすり」を地道に行い、多くのオスを味方につけていたのです。
勝負は一瞬でした。飼育員が駆けつけた時には、「マンタロウ」は巨大な「ダイキチ」にひっくり返されていました。「ダイキチ」は昨年の失敗を繰り返さないよう、自慢のパワーに加え、「マンタロウ」にも負けないスピードも身につけていました。周りのオスは息を凝らし、固唾を呑んでその事態を見つめていました。その後、「ダイキチ」は権力を誇示するように、わざと「マンタロウ」の近くを歩くようになり、一方「マンタロウ」は「ダイキチ」と距離を置くように逃げる展開となりました。
6月に入ると、再び「マンタロウ」が「ダイキチ」に挑むような姿勢が幾度となく観察されています。「ダイキチ」の目の前で背こすり行動をしたり、誇示歩行をおこなったりと、攻撃をしないまでも「ダイキチ」への挑発を繰り返していました。しかし「ダイキチ」はそれを見ても相手にする様子はなく、「マンタロウ」の背こすり跡に背こすりを上塗りし、威圧をかけながらゆっくりと「マンタロウ」の方へ歩いていくなど、堂々とした態度で自らの力を見せつけていました。
「マンタロウ」は「ダイキチ」に勝てないと見ると、あろうことか「ダイキチ」の双子の兄弟である「ナッツ」に威嚇し、攻撃をしかけたことがありました。「ナッツ」の状況を察知した「ダイキチ」はすぐさま駆けつけ、「マンタロウ」を赤子の手をひねるようにひっくり返してしまいました。
闘争の勝敗や立ち居振る舞いをみると、圧倒的に「ダイキチ」が第一牧場を支配しているような空気を感じます。ただ、発情期のオスの代名詞である「背こすり」回数については、「マンタロウ」が発情期間中158回とボスである「ダイキチ」の93回に勝る記録で、この回数には「マンタロウ」の気迫を感じます。来年以降も「マンタロウ」の動向には注目していきたいと思います。
今年は5月の「飛燕草の戦い」が決め手となり、ボス争いの力関係が覆されることはないまま、発情期を終えました。5年連続となるボス「ダイキチ」はボス就任連続記録をどこまで伸ばすのか、今後の「ダイキチ」にも期待したいと思います。
「ダイキチ」
生年月日:2006年1月27日生まれ、現在11才
第20代目ボス就任:2013年7月(就任時7才)
体重:約450 kg
身長:約2m60cm
頭胴:約2m30cm
「マンタロウ」
生年月日:2006年1月16日生まれ、現在11才
ボス就任歴:なし
体重:約350 kg
身長:約2m10cm
頭胴:約1m90cm