のぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「ライサ」(メス)が2025年12月1日に死亡しました。34歳でした。
ライサは1991年1月25日に生まれました(父:不明、母:ウラコ)。綺麗な半円型の耳が可愛らしいヒグマで、2016年まで第二牧場で活躍していました。
引退後は同居のトルエ達とのんびりと余生を過ごしていましたが、2021年から足を痛がる様子が時折認められたため、獣舎を変更し、痛み止めの投薬で治療をしていました。
その後、歩様は安定しましたが、2023年4月には両後肢を引きずりながら歩く様子が認められ、再度痛み止めや炎症を抑える薬の投与を開始しました。2023年8月には起立に時間がかかることから治療室での集中的な治療を行い、その結果同年9月にはもう一度キャンコやヒバリ達のいる獣舎に戻すことができました。
後肢の麻痺は残りながらも食欲は旺盛で、調子の良い日はスロープを設置した展示場に自ら出て日向ぼっこをしていました。
しかしながら2024年3月、冬ごもり明けにはこぶし大の褥瘡(床ずれ)ができており、後肢の麻痺が進んでおり、四肢での起立ができなくなっていました。再度治療室で褥瘡の集中的な治療と痛み止めの投薬を継続し、褥瘡は良化しましたが亡くなる日まで再び立ち上がった姿を見ることはできませんでした。
獣医・飼育員一同、少しでもライサのQOL(生活の質)を上げるため、褥瘡予防用の柔らかいマットの整備や藁の使用、またエンリッチメント器具やフィーダーの導入、健康管理のために無麻酔採血のトレーニングなどを行っていました。
ライサは新しい器具にはすぐに興味を示し、後肢は動かせないながらも、器用に利用できる賢いヒグマでしたが、一方で無麻酔採血トレーニングではうまくできないとイライラする様子をあらわにするような、表情豊かなヒグマで、見ているだけでクスッと笑ってしまうような個体でした。
しかし、2025年に入ってから、感染由来の膀胱炎を発症し、薬に対する耐性も認められました。膀胱炎は治療により良化したものの、再発のリスクが高いこと、褥瘡は部分的な悪化を認め、完全な治癒と維持が困難であること、現状以上の飼育環境の改善が困難なことなどから、ライサのQOLを上げることが難しく、むしろ低下していく可能性が高いと判断したため、2025年11月30日に倫理委員会を実施し、誠に苦渋の決断ではありましたが早急な安楽死処置を実施することとなり、翌日の12月1日に安楽死処置を実施いたしました。
病理解剖の結果、頸椎(首の骨)を主とする変形性脊椎症および両前肢の肘関節(ひじ)における重度の関節症、右足の腓骨骨折を認めましたが、後肢麻痺の原因の特定には至りませんでした。また、褥瘡については関節炎を引き起こすほど重度ではなく、膀胱炎についてもごく軽度であり、治療できていたことが推測されました。
ライサは今後のクマたちの飼育管理向上のためにも大変貴重で重要な知見を残してくれました。身をもって多くのことを教えてくれたライサには本当に心から感謝しています。長かった治療生活もよく耐えてくれました。きっと天国では同じ獣舎だったイモリたちとのんびり歩き回っていると思います。今後もクマの疾患を予防するための知見を蓄積していくとともに、今までのライサとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に全力を尽くしてまいります。














