のぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「コルク」(メス)が2025年10月27日に死亡しました。推定年齢41歳でした。
コルクは1984年に生まれたと推定されています(父母不明)。推定されている限りではクマ牧場で一番高齢のおばあちゃんクマでした。
26歳となった2015年の10月頃に体調不良が確認され、体力の低下に伴い第二牧場を引退し、バックヤードで生活していました。同じように第二牧場を引退したヒバリやテンテンとは特に仲が良く、くっついて寝る様子などがみられていました。
2002年まで第二牧場で活躍しており、引退後は同じ獣舎で暮らすションやノリピー、ニイヨたちとのんびりとした余生を楽しんでいました。タイヤを枕にして寝ていたり、他の個体とくっついて休んでいたりと微笑ましい日常でした。
ヒグマの寿命が30年程度と言われている中で、コルクは信じられないくらいの高齢でしたが、それを全く感じさせない機敏な動きと食欲旺盛な姿を私たちは毎日驚きながら見ていました。また、学習の速さも素晴らしく、無麻酔で採血することが出来るとても賢いクマでした。

無麻酔による採血に応じてくれるコルク
2024年頃から時折食欲が低下する様子を認め、投薬治療を開始し、2025年4月には重度の炎症所見が認められました。また、痩せてきている様子が認められたため、カロリーの高い餌や嗜好性の高い餌を積極的に給餌するなど飼育員・獣医で協力して治療を行っていました。薬や餌もしっかり食べてくれたため、炎症所見と体格は一時良化しましたが、同年7月には黒色便(胃や小腸からの出血を疑う症状)が継続して見られるようになりました。それに伴い、8月にはだるそうな様子と食欲低下がみられ、隔離治療を開始しました。
麻酔下での検査の結果、重度の貧血と胃の出口付近に腫瘍を疑う構造物が認められ、腫瘍による痩せ、食べ物の通過障害、消化管出血の可能性が高く、根本治療は難しいと判断しました。しかし、コルク自身は日によってムラはあるものの、餌を欲しがる様子や檻内をうろうろする様子があったため、飼育方針について協議を行いました。結果、他個体とのコミュニケーション等を優先するため再度獣舎に戻し、できる限りのQOLを維持することとなりました。
獣舎に戻ってから一時的に状態は良化し、食欲は波があるものの、獣舎を自由に動きまわる様子を見せていました。10月中旬以降再び動作緩慢な様子と食欲低下が続くようになり、10月25日には食欲廃絶を示しました。再度協議を行い、これからの冬ごもりを耐えられる体格ではないこと、重度の貧血があり食欲廃絶になるほどの苦痛を感じている可能性があることから、苦渋の決断ではありますが安楽死処置を実施することとなりました。
病理解剖の結果、十二指腸において腫瘍を疑う構造物が確認され、出血の原因部位と考えられました。また、膵臓の炎症や膵管の肥厚、胆嚢および胆管の拡張、肝臓における腫瘍性病変を認め、十二指腸の腫瘍から広がっていった可能性が高いと考えられ、外科的切除は困難であったと推察されます。
コルクは今後のクマたちの飼育管理向上のためにも大変貴重で重要な知見を残してくれました。身をもって多くのことを教えてくれたコルクには本当に心から感謝しています。きっと天国では仲の良かったションやノリピーとの再会を果たしていると思います。
今後もクマの疾患を予防するための知見を蓄積していくとともに、今までのコルクとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に全力を尽くしてまいります。















