のぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「ノリピー」(メス)が2025年7月14日に死亡しました。36歳でした。
ノリピーは1989年1月18日に生まれました(母:ウラコ、父:不明)。2001年から第二牧場で展示個体として活躍し、小柄で愛らしい容姿は多くの来園者から人気を集めていました。
しかし、2014年に体調不良を示したため展示は中止し、バックヤードで治療を行っていました。治療によって体調は良くなりましたが、歩行中痛がる様子があったため、展示を終了しバックヤードでの隠居生活がはじまりました。
バックヤードでは痛み止めの投薬により、痛がる様子もなく、同じ部屋のコルクやニイヨたちと仲良く固まって寝ていたり、一緒に餌を食べたりのんびりと生活していました。飼育員が声をかけると我先に寄ってきておやつをねだる愛らしい姿が印象的でした。
2025年7月13日の朝、獣舎奥で横になっており喘鳴(いびきのような音)を伴う異常な呼吸と意識消失を認めたため、緊急で治療と検査を開始しました。鎮静下で口内を確認すると、気管に粘液がたまっておりこれが異常な呼吸の原因と考えられました。粘液を取り除くと呼吸は安定しましたが、抗生剤や抗炎症薬、輸液の投与などの治療を行っても意識は戻りませんでした。鎮静下でのエコー検査では異常は発見されず、聴診では顕著な心拍数の増加を認めましたが、意識消失に繋がる原因は判明しませんでした。
鎮静処置終了後、一時的に覚醒しわずかに足を動かす様子はありましたが、再度意識のないような状態が続き、7月14日の朝に倫理委員会を開くことを決定しました。しかし7月14日の午前5時には呼吸が止まっているのが確認され、心停止、角膜反射の消失をもって死亡確認をいたしました。7月12日まではいつも通りの元気な姿をみせており、飼育員一同信じられないような思いでした。
病理解剖の結果、加齢に伴う脊椎症および関節症や心臓の一部に梗塞を疑う病変と脳の大きさの左右非対称性が確認されました。心臓と脳に関しては死因に関与していた可能性が高いですが、詳細は組織検査の結果待ちとなります。
ノリピーは今後のクマたちの飼育管理向上のためにも大変貴重で重要な知見を残してくれました。身をもって多くのことを教えてくれたノリピーには本当に心から感謝しております。今後もクマの疾患を予防するための知見を蓄積していくとともに、今までのノリピーとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に努めてまいります。