エゾヒグマ「ション」が亡くなりました。

2024年5月17日にのぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「ション」(メス)が死亡しました。推定年齢40歳でした。(当時は個体識別がされておらず、生年が不確実のため推定年齢としています。)

数年前から加齢に伴い白内障や歯周病を患っておりましたが、食欲は旺盛で歩様は時折不安定な日もありましたが大きな異常を認めていませんでした。冬ごもり明けの2024年4月下旬より歩行時にふらつく様子が散発的に確認され始め、自力移動は可能で摂餌も確認されていたことから、経過観察を行っていました。しかし、5月上旬には移動時に転倒する様子が確認され全身の痩せも目立っていたため、倫理委員会を開き、ションの今後について議論を重ねました。オリに隔離することも検討しましたが、ションの精神的苦痛及び歩様の悪化が懸念されたため、まずは原因追及の目的で検査を行うことになりました。

高齢により麻酔の負担が大きいため、5月16日に最小限の鎮静下にて採血及びエコー検査等を行いました。検査結果から、重度の腎不全が疑われる数値が確認されるのと同時に、貧血および脱水状態が確認されたため、延命には連日の補液が必要であるという状況が分かりました。5月17日に2回目の倫理委員会を開き、ションの今後について議論の結果、予後の悪さと治療そのものの負担が大きくなる状況をふまえて、誠に苦渋の決断ではありましたが安楽死処置を施すことになりました。

病理解剖の結果、頚椎、腰椎部における重度の椎間板ヘルニアを含む変形性脊椎症、また卵巣および副腎における腫瘍が確認されました。

ションはこれまでののぼりべつクマ牧場の歴史を語るのに、なくてはならない存在です。クマ牧場をこれまで約40年間飼育員と共に支えてくれました。
また、今後のクマたちの管理向上のためにも大変貴重で重要な知見も残してくれました。身をもって多くのことを教えてくれたションには本当に心から感謝しております。
今後ともクマの疾患を予防するための知見を蓄積していくとともに、今までのションとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に努めてまいります。