のぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「トルエ」(メス)が死亡しました。2023年12月19日に安楽死処置を施しました。24歳でした。
トルエは1999年に新冠町ヌモトル山にて当時0歳の子グマであるオス2頭と共に捕獲されました。
3頭は当時の白老町アイヌ民族博物館にて飼育されていましたが、1歳となる前にトルエのみ、のぼりべつクマ牧場へとやってきました。捕獲場所となった「ヌモトル山」から「トルエ」と名付けられました。第二牧場(展示場)では、同年代のエリカやコロンと並びつつも控えめに前肢を上げ、おやつのアピールをしていました。
2023年11月28日に、トルエの前肢の歩様(ほよう)に異常が確認されました。痛みを伴うような跛行(はこう)であったため、鎮痛薬を開始しました。投薬後は一時的に良化したものの、次は後肢にて更に顕著な跛行が見られました。麻酔下で検査を行った結果、右後肢の細菌感染と消化管の異常が疑われたため、治療室に入院(隔離飼育)し集中的にケアをしていました。連日の投薬、補液処置を行い、定期的に血液検査を行っていましたが、食欲の低下が進行し血液検査の数値も日に日に悪化しました。
治療による改善の見込みが無く、痛みも重度であると考えられたため、12月19日に誠に苦渋の決断ではありましたが、トルエのためにできることを考え、倫理委員会にて議論を重ねた結果、安楽死処置を施すことになりました。
病理解剖の結果、体表皮下に細菌感染が確認され、特に右後肢において重度な状態でしたが、感染源を突き止めることはできませんでした。また、全身性に脂肪が壊死しており、重度の代謝性症状が疑われ、肝臓には腫瘤も確認されました。跛行の原因は感染症によるものと考えられましたが、全身性の疾患も関与している可能性がありました。病理解剖の結果からも予後は不良であったと判断されました。
トルエは今後のクマたちの管理向上のためにも大変貴重で重要な知見を教えてくれました。今後も大学の協力の元、病態の特定を進めていく所存です。トルエで学んだことを活かし、今後クマ達に起きる様々な異常の早期発見に努めてまいります。
身をもって多くのことを教えてくれたトルエには本当に心から感謝しております。今後もクマの疾患を予防、治療するための知見を蓄積していくとともに、今までのトルエとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に全力を尽くしてまいります。