のぼりべつクマ牧場通信 49号(2021年7月)

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動物福祉向上に向けて、全速前進!!

のぼりべつクマ牧場は公式サイトにて動物福祉向上のための目標を掲げた=6月20日

動物福祉ビジョンを掲げる!

のぼりべつクマ牧場は、開園60年以上の歴史をもつクマ牧場形態の先駆けとして、クマ牧場形態での動物福祉向上のノウハウ確立を目指しています。そのための具体的な長期目標として「動物福祉ビジョン2023」を掲げました。そのビジョンは、大きく3つに分かれています。

1つ目は、2023年までに全頭の行動データの記録を2年分蓄積し、解析を完了させることです。クマ牧場の先駆けとして動物福祉に配慮した飼育形態の確立を目指すには、クマ牧場形態の客観的なデータが必要と考えました。毎週1回、全頭の行動データを記録しており、現在の飼育環境では、どの時期に、どのような動物側のニーズがあるのか、科学的な視点で分析することを目指します。

5、6月分の全頭の行動観察データ

2つ目は、個体ごとの飼育管理技術の向上およびエンリッチメントの充実を目的として、全頭の10%以上での無麻酔採血の確立および全頭の眼科検診の完了、全頭個体ごとに応じたエンリッチメント器具の選定および獣舎内への設置を完了することを目指します。

ハチミツを用いた無麻酔採血トレーニングの様子

3つ目は、クマ牧場の先駆けとして、自社サイトにてクマ牧場で活用できる動物福祉のデータベースを作成し、国内のクマ牧場全体の動物福祉の向上に努めます。

これら3つの目標達成に向けて日々頑張っております。今後のクマ牧場に目が離せませんね。応援よろしくお願いします!

エブリデイ!エンリッチメント

クマの毛を再利用?

最近、クマたちの鼻は大忙し。そう、5月から7月にヒグマは恋の季節がやってきます。異性の存在を気にして、それぞれ思い思いの日々を過ごしています。

とある日、飼育員は換毛期になり獣舎に残る沢山の抜け毛を見て思いました。「そうだ、クマたちが異性の匂いを嗅ぎたがっているのなら、この毛をあげれば良いじゃないか!」と。オスにはメスの毛、メスにはオスの毛を与えるエンリッチメント。このエンリッチメントを予定に組込み、1週間のお試し期間を設けました。昼寝の多いおじいちゃんグマも、エネルギーがみなぎる様に毛の匂いを嗅いでいました。これは、革命的なエンリッチメントになりそうです。乞うご期待。

獣舎のそこらじゅうに散乱する抜け毛(6~7月がピーク)

気になる。全力リサーチ!

繁殖期の5月。オスにメスの毛を与えたらどんな反応をするのか、調べてみました。
まず、個体差はありますが、早くてわずか2分で陰茎が出はじめ、その後、背こすりなどのマーキングをし、からだや行動に変化が見られました。面白いことに血縁関係が近い兄弟にあたるクマの匂いについては、反応が薄いこともありました。また、毛を与える前まで、常同行動していたオスが20分間も毛に執着する変化も見られ、繁殖期のオスにとってそれほどメスの存在が大きく関わっていることが分かりました。観察を続けていて、クマの行動には謎に包まれていることが多く、今後も、クマごとの反応の違いなども検証し、解明していきたいと思います。

毛の提示で観察された行動(5~6月に実施)詳細は公式サイト参照。

高齢アヒル「チャッピー」

アヒルの寿命は10~20年ですが、先月で8歳を迎えましたメスのチャッピーは、のぼりべつクマ牧場の最高齢のおばちゃんアヒルです。今では足も悪く歩行もゆっくりで、段差などは飼育員の手も借りながら移動しています。手を出しすぎても筋肉などが落ちるので、できることは自分で動いてもらっています。そんなおばあちゃんですが若いアヒルに負けないぐらいの元気はありますよ!

チャッピー(右)と仲良しのオスのギンジロウ(左)=6月23日

マニアの独り言

最近、眼が痛いな。そういえば、眼の病気といえば、視神経障害が原因で視野が狭窄する緑内障があるけど、眼圧上昇によって網膜が剥がれて、急に失明してしまうとかは怖いよなぁ。視力を維持することは動物の生活の質の維持において重要だから、クマ牧場においても、眼の異常の早期発見のために、眼の状態確認や行動に違和感がないか、定期的なスクリーニング検査の強化を図っているもんな。とりあえず、顔洗ってくるか。

緑内障が悪化したヒグマ「シンコ」の眼。現在は症状が治まっている。

のぼクマ劇場

なる作