のぼりべつクマ牧場通信 18号(2018年12月)

(↑クリックでPDFをダウンロード)

 

ニイサ・ニイヨ姉妹引退


17年の第二牧場生活にピリオド
長年に渡り活躍し続けていた「ニイサ」「ニイヨ」が、高齢のため第二牧場を引退しました。「ニイヨ」については先月から歩様が不安定となる腰痛の症状が出ていましたが、薬により痛みは治まり、歩様も良化しました。今後は腰に負担がかからないように起伏の少ない平坦なバックヤード(非展示スペース)へ引っ越すことになりました。ニイヨの引退に伴い、一緒に行動していた双子のニイサも、ニイヨと同居させてあげるため引退を決定しました。
 
いつでも双子で行動し、牧場のセンターで毎日オヤツもらいをする姿は、第二牧場のシンボル的な存在でした。双子の一方が困っているときはすぐにかけつけ、日向ぼっこをするときは寄り添って仲よくお昼寝をしていました。2頭が移動をした次の日、少し寂しい感じがしましたが、若手のエリカとコロンが満を持して牧場のセンターに立ちました。コロンはニイサの子で顔が母にそっくりです。親譲りの愛嬌で見ている人を笑顔にさせてくれます。
 
新たな生活の場となるB獣舎では、昔に第二牧場で一緒だったテンテンやアッキーたちと再会し、仲良く暮らしています。
 

同期の3頭仲よく昼寝=上からキャンコ、ニイサ、ニイヨ

手におえない?!モンスターベアーたち

10月27日~11月4日の土日祝日に毎年恒例イベント「子グマのハロウィン」を行いました。お手製のカボチャを丸ごと与えるとかぶりつきますが、カボチャが硬いようでなかなか歯が立ちませんでした。
 

カボチャを丸かじりする3頭=10月27日、子グマ牧場


11か月齢の子グマたちですが、大きさは女性飼育員の身長ほどまでになりました。体重は以前のように抱きかかえて量ることができない重さになってしまいました。食べる量も多いときは3頭で一食20kgほどを平らげてしまいます。大きくなった子グマたちは、今月バックヤードへ移動します。移動まであと数日ですが、成長した姿をご覧ください!
 

抱きつくベクト、相手をする飼育員=10月27日、子グマ牧場

ツキノワグマの白内障手術が成功

「もう一度、世界を見せてあげたい」
非展示個体のツキノワグマの「ノビタ(20歳)」は約10年前から白内障になっており、ほぼ失明状態でした。まわりのものは匂いのみで確認している状況でした。広いスペースへ出すことも、餌を探すことも、困難を極めていました。そこで、ノビタの生活の質向上を図るため、手術をすることに踏み切りました。手術は酪農学園大学の全面的な協力を得て実施することができました。
 
7月6日酪農学園大学にて4時間にわたる大手術が行われました。無事に手術は成功し、ノビタの眼から白い水晶体が無くなりました。
 

ノビタの目=写真左・手術前、写真右・手術後


手術後に眼の炎症が発生してしまう可能性があるため、複数の飲み薬で痛みや炎症を管理することを試みました。薬が苦いせいかなかなか飲んでくれず、ハチミツやジャムに混ぜ与えても吐き出してしまいました。試行錯誤の末にトマト、リンゴ、ニンジン、オレンジの手作りミックスジュースなら飲んでくれるようになりました。
 
手術後は少し痛いのか目の瞬きが増え、前肢で眼をかいたりしていました。急に見えるようになったことで飼育員の姿にも驚いていました。手術の翌日は普段の環境も警戒して、いつも出入りしている放飼場にも出ることができませんでした。そこで、ノビタのペースに合わせた「見える生活」へのリハビリが始まりました。声をかけて安心させる心のケアから始め、自由に放飼場を歩かせるなどさまざまなことに取り組みました。そして、日が経つごとにノビタの警戒心は薄れていきました。
 
11月4日、手術後初めてクマ山ステージに放飼しました。ノビタは自力でスロープを登りステージへ上がっていきました。ノビタのクマ山ステージ放飼は実に15年ぶりのことでした。恐る恐る歩いていましたが、懐かしさを覚えているようでした。その後、11月7日には報道陣へのお披露目を兼ねて、2回目のクマ山ステージへの放飼を行いました。大勢の報道陣に対して初めは緊張した面持ちでウロウロと歩き回っていました。後半は報道陣に興奮してなかなか帰ろうとしませんでした。
 

15年ぶりのステージを踏みしめる=11月7日、クマ山ステージ


リハビリを続け、ノビタが見えることに慣れてきたら、皆さまにご覧いただけるようになると思います。
現在、ヒグマ博物館1階 特設会場にて、「ノビタ」が視力を取り戻すまでの特別展を開催しています。貴重な動画もありますので、ぜひご覧ください。これからも、ノビタだけでなく飼育動物たちの「生活の質の向上」を目指して行きます。
 

手術後のノビタ=7月15日

動物慰霊祭2018

11月7日に飼育動物を弔う「動物慰霊祭」を執り行いました。参列した飼育員は、亡くなった動物との思い出を巡らせていました。今年はエゾヒグマのコクチャ(30歳)、モカ(31歳)、ナイアガラ(33歳)、クララ(27歳)、ライト(30歳)、エゾリスのタイヨウ(7歳)が亡くなりました。飼育員一同、ご冥福をお祈りいたします。
 

追悼の祈りをささげる飼育員=11月7日、獣魂碑前

のぼクマ劇場

作:さとうりさな

飼育員は見たべあ!一覧はこちら