のぼりべつクマ牧場通信 10号(2018年4月)

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母グマ子育て奮闘記

産後2か月、現在の子グマのようすに迫る!
今、牧場内の産室では母グマの「コロン」、「ベッキー」、「エリカ」が順調に子育てを行っています。出産した子グマはコロンが1頭、ベッキーが2頭、エリカが1頭の計4頭です。室内からは子グマたちの元気な鳴き声が聞こえています。産後2か月ほど経った、子育てのようすを紹介します。
 

ベッキーと2頭の子=3月20日、産室

産後2か月が過ぎ、観察をしているうちに段々と変化が見られるようになりました。以前は母グマがしっかりと抱いて、なかなかその小さな姿を見せてくれませんでしたが、今では2リットルペットボトルくらいの大きさになり、母グマのお腹の脇からモゾモゾと動く姿が見られるようになりました。さらに成長するにつれ、両親の特徴が出てきたのも確認できています。コロンには胸にくっきりとした白斑(白い模様)がありますが、子グマにも同じような白斑が現れています。
 

成長が実感できるのは見た目だけではありません。産後しばらくは寒さで子の体が冷えないように、母グマが子を肌身離さず抱いています。しかし、今では子が母グマのお腹の下からはい出したり、母グマも四肢で立ち上がったりと、母子が密着している時間が少し減ってきました。この子育てのようすを記録した映像を、ヒグマ博物館2階の「ヒグマの世界」コーナーにて放映しています。
 

※この記事が書かれた後、3月19日に「エリカ」の子の死亡が確認されました。死因は子グマ自身の病気によるもので、詳しい死因は検査結果待ちです。産後54日目で体重も1470グラムまでに成長してからの死亡で、とても残念な結果となってしまいました。ご冥福をお祈りします。

 

子グマと出産

野生では、妊娠したヒグマは冬ごもり中に出産します。ではなぜ、飲まず食わずの厳しい条件の中で出産を行うのでしょうか。まず、交尾の時期を考えてみましょう。冬ごもり穴から出てきた春は、体力回復の時期です。秋は冬に備えてたくさん食べる時期です。交尾は、採食行動が落ち着く夏場に行うと都合が良いようです。そうなると、出産の時期は冬ごもり中がヒグマにとって一番都合が良いのでしょう。また、冬ごもりの巣穴の中で出産を行えば、外敵に襲われる心配もありません。

 

神秘的なヒグマの繁殖

では、どういうメカニズムで12月~2月に出産ができるのでしょうか。クマの発情期は5月~7月中旬で、この時期に交尾をして受精卵ができます。受精卵はある一定のところで成長が止まり、着床しないまま子宮内を漂っています。そして11月ごろ、充分に栄養を蓄えたメスグマのみ受精卵が着床します。そこから胎児に成長し、2~3か月で出産が可能なサイズになります。この交尾をしてから出産までの時期を遅らせることを着床遅延と言います。このメカニズムのおかげで冬ごもりの間に出産をすることが可能というわけです。
 

ヒグマの産子数は1~2頭、まれに3頭です。生まれてくる子グマの体重は約400グラムで、母グマと比べるとかなり小さいことが分かります。小さく産まれてくる利点は、飲み食いすることができない冬ごもり中に、少量の乳で子を育てることができることです。母グマは秋の食い溜めで蓄えた脂肪から乳を作り、水分の割合を少なくすることでエネルギーの節約をしています。人や牛の乳と比べると、水分が少なくタンパクや脂肪が多い乳を出しています。

 

コテツとダイチ

~子グマ牧場卒業から4か月が経った今~
昨年の子グマ、コテツとダイチが生まれてから約1年3か月が過ぎ、2頭はさらに大きくなりました。性格の違いは相変わらずです。ダイチが控えめでおとなしいのに対しコテツは強気の性格で、隣の放飼場にいる年上のクマにも格子越しにクマパンチをお見舞いするなど、好戦的な一面が目立ちます。このようにクマの行動を観察していると、個体ごとにさまざまな性格をしているのだなと実感させられます。
 

放飼場からこちらを見上げる=右側ダイチ・左側コテツ

教えて!! Q&A

〇ペンネーム「くーま」さん
Q クマの寿命は?
A 野生では捕獲クマの最高齢として約34歳のエゾヒグマが記録として残っています。のぼりべつクマ牧場での最高齢はオスのロコ34歳、メスのヨシコ33歳です。
 

オスのヒグマ「ロコ」享年34歳


〇ペンネーム「なこじん」さん
Q どういう基準でクマのグループを分けているのですか?
A 齢、性別、性格などを考慮してグループの編成をしています。成長するごとにグループが変わることもあります。
 

エブリデイ!エンリッチメント

嗅覚を利用した感覚エンリッチメント
感覚エンリッチメントとは、主に五感を刺激するものです。普段かぐことのないにおいで刺激することで、様々な動作を促すことができます。現在は多種のデオドラントスプレー、ハチミツ水、石鹸、わさび、タバスコ、香水などを獣舎や格子にふりまいています。用いる刺激によってそれぞれ異なった反応があり、においの強い香水では何度も体や頭を格子にこすりつけるなどの激しい反応を示します。タバスコにおいては唾液を垂らし近づくクマもいたり、距離を置くクマもいたり個体によってさまざまな反応が見られます。
 

デオドラントスプレーをまく飼育員=3月8日、C獣舎

身近なものを使ったフィーダー
今回はエゾリスのフィーダーを紹介します。ペットボトル型のフィーダーで、ボトルの側面には穴が開いており、回転させると穴から餌が出てきます。エゾリスはすぐに興味を持ち、見事中の餌を食べることに成功しました。
 

続いてこちらは、ガチャガチャカプセル型フィーダー。カプセルの底に穴を空け、フィーダーを吊るしたもの。カプセルを叩けば中から餌が落ちてくる仕組みですが、教えるとさっそく使いこなしていました。餌をセットする時間は昼ごろですので、無我夢中でフィーダーを動かしているエゾリスたちが見られるかもしれません。
 

知恵を駆使して餌をゲット=写真左ペットボトル型フィーダー、奥タイヨウ・手前セイジ、写真右カプセル型フィーダー、セイジ

のぼクマ劇場

作:さとうりさな