エゾヒグマ「カコ」が亡くなりました。(※死因:衰弱のため安楽死処置)

のぼりべつクマ牧場のエゾヒグマ「カコ」(メス)が死亡しました。2023年1月3日に安楽死処置を施しました。27歳でした。

カコは1995年2月13日にブンタとサトミの間に生まれました。第二牧場(展示場)では、緑のオリの上で前肢を元気に挙げながら、「ガオガオー」と美声をあげて最前列の目立つ場所でおやつのアピールをしていました。

2022年2月、突然獣舎で後肢が動かなくなる起立不能状態となりました。麻酔下での検査を経て背骨の疾患である変形性脊椎症が疑われたため、治療室に入院(隔離飼育)し集中的にケアをしていました。後肢の状態は悪化したり僅かならが良化したりを繰り返していましたが、6月には入院生活が長い影響か痛みが強くなってきたのか、活動量や食欲も低下し、QOL(生活の質)スコアが低下しているのが確認されました。

倫理委員会での話し合いの結果、QOLの向上を目的としてカコの選択肢を増やすため、四肢での起立は出来ない状態ではありましたが痛みの管理などは継続しながら獣舎でのリハビリ生活を開始しました。獣舎では後肢を引きずりながらの動きではありましたが、とても活動的になり、前肢や口を上手く使って浮き球や消防ホースのエンリッチメントを利用できるほどになっていました。8月には、膝立ちで四肢での起立に近いような姿で移動する様子も頻繁に確認されるようになっていました。他のクマたちと同様に餌や飼育員に反応して活発に動けるようにまでなっていました。

しかし、10月に入り再度起立困難な状態になり、食欲も安定しない状態になりました。12月以降は痛みが重度になってきている様子で、鎮痛薬を増量するなどをして処置を継続してきましたが、褥瘡(床ずれ)も発生してしまい薬剤で痛みを抑えることも難しくなり、活動量や食欲もほとんどなくなりQOLスコアも著しい低下がみとめられました。年明け1月3日に誠に苦渋の決断ではありましたが、カコのためにできることを考え、倫理委員会にて安楽死処置を施すことになりました。

病理解剖の結果、カコの起立不能の原因は「変形性脊椎症(椎体の骨増生)」でした。高齢のクマでは高頻度で確認される病態で、悪化すると起立不能に陥ります。
のぼりべつクマ牧場では起立不能状態のままで初めて獣舎へ復帰することになったカコですが、獣舎でのリハビリの結果、活動量が増えるなどのQOLが向上することを教えてくれました。今後の高齢クマたちの管理向上のためにも大変貴重で重要な知見を教えてくれました。身をもって多くのことを教えてくれたカコには本当に心から感謝したいと思います。
今後ともクマの疾患を予防するための知見を蓄積していくとともに、今までのカコとの思い出を懐かしみ、現在のクマたちの福祉向上に努めていきたいと思います。