ヒグマクイズ「コミュニケーション」解説

Q1 単独で生活する野生のヒグマは、ヒグマ同士で主にどうやってコミュニケーションを取るでしょう。

正解は…2. 匂い!

【解説】広大な森の中に住んでいるヒグマにとって、「匂い」はかなり重要な情報になります。特に5月から7月はヒグマにとって繁殖期の為、繁殖する相手を探すために異性の匂いを元に長い距離を歩き続けます。
その異性を探す手がかりになる「背こすり行動」は、木などに自分の背中の匂いを擦り付け、私たち人間の目では見ることができない情報を、匂いで伝え合うコミュニケーション方法のひとつです。


Q2 のぼりべつクマ牧場のオスグマにメスグマのフンの臭いをかがせると、どういう反応をするでしょう。

正解は…2. 唾液が分泌され、背こすり行動が引き起こされる!

【解説】実はヒグマの肛門付近から「フェロモン」というコミュニケーションを取るための物質が分泌され、フンに付着していると考えられています。そのフェロモンによって、フンの匂いを嗅ぐと唾液が分泌され、マーキング行動の一種とされている背こすり行動が引き起こされます。
また、「鋤鼻器(フェロモンを感じ取る器官)」はヒグマの場合、口腔内の上部に位置しているため、フンの匂いを嗅ぐというよりかは、舌先で舐めるような行動が見られます。もしかすると、フェロモンの他にもフンの中に何か情報を伝える手がかりが潜んでいるのかもしれませんね。


Q3 ヒグマのマーキング行動の一種である「ペダル・マーキング」とはなんでしょう。

正解は…2. 地面に足を擦り付けること!

【解説】ペダル・マーキングは、別名「足こすり」とも言われています。この行動は、両後肢の足の裏を擦りつけるように左右に動かしながら歩くことで、足の裏から出ている特別な匂いを地面に付ける行動のことを言います。つけている匂いを分泌しているのは「アポクリン汗腺」と「皮脂腺」という組織です。アポクリン汗腺は「汗腺」とついていることから分かるように汗を出す組織の仲間です。この汗腺は、一般的に「汗」と聞いて私たちが想像する体温調節のための汗腺ではなく、フェロモンなど「匂い成分が含まれた汗」を出す汗腺です。これらの組織から分泌される成分を地面に擦り付けることで、コミュニケーションを取り合っています。

のぼりべつクマ牧場のオスグマの展示場では、背こすりの匂いを嗅いだ後や威嚇などのケンカ後に、ペダル・マーキングをよく見かけます。最近では野生のヒグマの研究から、足の裏から出る匂い成分がオスとメスでは違うことが分かり、雌雄判別ができるようになったという研究結果が報告されています。


Q4 オスグマはメスグマの、どこを軽く噛みながら交尾行動を行うでしょう。

正解は…3. 首!

【解説】のぼりべつクマ牧場では、繁殖計画に基づき5月頃からペアリングを行います。ペアリングは、オスとメスの血縁関係や性格、年齢を見ながらペアを決め、同居します。その際、オスグマは鼻息が荒くなり、メスグマのお尻の匂いを嗅ぎに背部に回り込み、首の皮膚を軽く噛みながら交尾を行います。

ペアリングを始める前に、メスグマではエコー検査で生殖器に異常がないか確認をし、オスグマでは精子に問題がないか精液採取をおこない検査をしています。同居を開始すると、メスグマは気に入ったオスグマであれば、お尻を向けてオスを誘う積極的なメスグマもいますが、発情がまだ十分ではなかったり少し警戒心が強かったりするメスグマでは、オスグマにクマパンチからビンタまですることもあります。しかし、オスグマはめげずに紳士的にアタックし続けます。


Q5 のぼりべつクマ牧場では、相性が合わない、または嫌いなクマ同士が近づくと、どういう反応をするでしょう。

正解は…1. 低い声でうなる!

【解説】のぼりべつクマ牧場では、2022年現在では71頭のヒグマを飼育しています。オスグマを飼育する第一牧場とメスグマを飼育する第二牧場では、飼育員がクマの性格を把握して健康状態もチェックしながら、毎日放飼しています。しかし、クマ同士みんながみんな仲良しではなく、相性が合わないクマ同士は時にはケンカをすることもあります。
ケンカの前は、頭を低くして低い声でうなることで、相手に「これ以上近づくなよ!」というように威嚇します。鳴き声でもコミュニケーションを取り合っています。


いかがでしたか?ヒグマクイズはテーマを変えて毎月更新予定!次回もお楽しみに!

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