のぼりべつクマ牧場通信 5号(2017年11月)

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クマの食欲ピークに

天高く熊肥ゆる秋、クマの食卓事情
食欲の秋とはよくいったものですが、クマは秋になると食欲が増加します。野生のクマは12月ごろから冬ごもりをするのが一般的です。飲まず食わずの状態で春先まで過ごすので、秋にたくさんの栄養を摂取し、脂肪を蓄えておく必要があります。
 

のぼりべつクマ牧場のクマたちは、毎日餌を貰っているので冬ごもりはしませんが、野生のクマと同じように、秋になると多くの餌を食べるようになります。それではクマ牧場のクマたちは、どのようなものをどれくらいの量食べているのでしょうか。

 

メインの餌は、複数の配合飼料を飼育員がブレンドしたものです(配合飼料の主な原材料はトウモロコシ、ふすま、大豆油かす、ビート、魚粉など)。この時期は餌の中にドングリも混ぜます。他にはニンジンやリンゴなど、季節の野菜や果物を給餌します。食事内容に変化をつけるためにコクワ、ナナカマド、ヤマブドウ、マタタビなどの野生の木の実を与えることもあるのです。植物質の餌が中心ですが、時々サーモンも給餌しています。

複数の配合飼料ブレンドした餌=10月17日

 

給餌量は年齢、性別、体格によってさまざまですが、大人のオスグマ1頭の場合、1日で約13kgの量を数回に分けて与えています。さらに第一牧場、第二牧場のクマたちは、放飼場からバックヤードに帰った後も餌を食べているのです。給餌量の少ない真冬に比べて秋は3倍ほど多く与えています。
食欲の秋というのは人間だけではないということですね。日に日に寒さが増していきますがクマたちの真似をして脂肪を蓄えすぎないように気をつけましょう!

 

ラスト1カ月、差し迫る

今年の子グマ最後のイベント「子グマのハロウィン」は11月3・4・5日で終了となります。
毎年12月ごろに子グマたちは子グマ牧場を卒業し、大人のクマたちがいるバックヤードへお引越しをします。子グマ牧場でコテツとダイチを見ることができるのは残り1カ月ほどです。彼らのとどまることを知らない成長っぷりをぜひ見届けてください!

 

ヒグマフォーラム2017in登別

 

ヒグマの会主催のフォーラムで、テーマは「ヒグマ飼育の未来~社会貢献と福祉~」です。飼育下での研究成果や福祉の状況、近年話題の環境エンリッチメントの取り組みなど、専門家によるヒグマ飼育に関する複数の講演があります。のぼりべつクマ牧場からは学芸員の坂元飼育員が講演します!ほかにも十勝のサホロリゾート・ベアマウンテン園長、研究者として北海道大学の教授、動物福祉の海外の専門家などが講演します。ぜひこの機会にクマの「飼育」について考えてみませんか。(申し込み不要)

 

エブリデイ!エンリッチメント

動物園など野生動物が飼育されている環境は、本来の生息地の環境と比較すると単純になってしまいます。例えば餌は飼育員が準備してくれますし、命の危険を感じるような外敵もいません。そこで、ただ食べて寝るといった単調な生活にならないように、動物の飼育環境に刺激を与える試みが「環境エンリッチメント」です。具体的には餌を隠して与えたり、部屋の中に遊具を取り付けたりするなど、そのクマに合わせて工夫します。

 

のぼりべつクマ牧場では約80頭のクマを飼育しており、全頭に充実した環境を提供できるように、飼育員は日々環境エンリッチメントに取り組んでいます。クマたちが生活していて飽きない飼育環境作りを目指して、飼育員一同まい進していきます。応援よろしくお願いします!

 

廃材を再利用!

獣舎は外の放飼場に比べて刺激が少なく、しかもクマたちが最も長い時間いる場所です。そこで今回は、獣舎に消防ホースとタイヤを設置してみました。
タイヤはのぼりべつクマ牧場のロープウェイで使用し、廃材となったものをリユースしています。見た目とは裏腹に憶病なクマたちですが、徐々に慣れていき楽しそうに遊んでくれています。タイヤの中に餌を隠したり、消防ホースにハチミツを塗ったりと工夫をするとより満足そうにしています。

 

消防ホースとタイヤを組み合わせた環境エンリッチメント=10月9日、B獣舎

 

叩いて餌をゲットだぜ!

浮き玉などを利用し、フィーダー※を作りました。あらかじめフィーダーの中にドングリなどを入れておき、触ると穴から落ちてくるという仕組みです。設置当初は使い方が分からないようすでしたが、一度覚えてしまえばお手のものです。
※フィーダーとは餌を与える道具のことをいいます。

 

フィーダーで遊ぶクマたち=クッタ・カイ

フィーダーで遊ぶクマたち=コテツ・ダイチ、10月14日

教えて!! Q&A

○ペンネーム「まい」さん
Q クマの毛は生後何日ではえてきますか?
A 生まれたときから生えています。生まれたばかりのころは毛が短く細いので、ピンク色の地肌が見えています。

 

○ペンネーム「むらみこ」さん
Q サチオは元気ですか?今回サチオに会いに来たのですが会えずに残念です。
A サチオは腰痛(変形性脊椎症)の疑いがあったため入院していますが、痛みは軽くなったようで今は元気にしています。しかし、寒さが厳しくなる冬は、腰痛が悪化する恐れがありますので暖かくなるまでは入院する予定です。
 

ゆっくり休んでます♪=10月19日 現在

牧場の秋を見つけた

季節は移ろい、山は彩り、夏の景色とは一変したのぼりべつクマ牧場。秋色に染まった山を見渡せば、飼育動物の他に野生の動物を観察することができます。
園内で最もお目にかかれる野生の哺乳類がエゾシカです。今はエゾシカの発情期。ロープウェイの窓越しに、秋ならではのオス同士の熱き戦いを観察できるかもしれませんよ!

 

ゴンドラ越し2頭の小鹿に遭遇=10月2日、ロープウェイ

 

のぼクマ劇場

作:さとうりさな

きょうのくまさん

ロッキー♂(7)

 

ボス・ダイキチの息子。親譲りの体格、勇ましい顔立ち。父の背を追いかけて日々精進!
 
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